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令和元年度麻疹(はしか)の流行予測

令和元年度 麻疹抗体保有状況調査 −宮崎県−

調査目的

厚生労働省では、今後の流行の推定と予防接種計画等の資料とすることを目的に感染症流行予測調査を実施している。本県ではその一環として、麻しんに対する抗体保有状況を調査した。

調査時期

2019年7月1日〜8月7日

調査対象

11年齢群201名(0〜5か月:4名、6〜11か月:6名、1歳:12名、2〜3歳:21名、4〜9歳:23名、10〜14歳:23名、15〜19歳:21名、20〜24歳:22名、25〜29歳:22名、30〜39歳:23名、40歳以上:24名)から同意を得て収集した血清を対象とした。

調査内容

県立宮崎病院小児科を受診した小児と宮崎県健康づくり協会の健診を受けた方から同意を得て採取された血清について、麻しんウイルス抗体価測定キット(セロディア−麻疹:富士レビオ)を用いて麻しんPA抗体価を測定した。

調査結果および考察

国の感染症流行予測調査報告書では、PA抗体価16倍未満が抗体陰性、16倍以上が抗体陽性とされている。国立感染症研究所によると発症予防のためには少なくとも128倍以上の抗体価が求められている。

  1. 年齢別抗体保有状況(図1、表1)
    PA抗体価を16倍以上、64倍以上、128倍以上に区分した結果、16倍以上(抗体陽性)の抗体保有率は、0〜5か月は100%、6〜11か月は33.3%、1歳は91.7%、2〜14歳は100%、15〜19歳は90.5%、成人は100%であった。定期接種年齢に達していない0歳は母親からの移行抗体を保有しているが、生後6か月頃までにほぼなくなる。そのため0〜5か月は高い保有率であった。6〜11か月の保有率は33.3%で、母親からの移行抗体の残存や治療等により抗体を保有していた可能性が考えられる。 0歳以外の128倍以上(発症予防のために求められる抗体価)の抗体保有率は、15〜19歳では76.2%にとどまるが、他の年齢では90%以上であった。特に2〜3歳及び25〜29歳では100%であった。
  2. 年齢別抗体(128倍以上)保有状況の年度別比較(図2、表2)
    2019年の128倍以上の抗体保有率を2018年と比較すると、ほとんどの年齢では差を認めなかった。15〜19歳は他の年齢に比べ抗体保有率は低いが、昨年より約14ポイント高かった。0〜5か月は昨年より低かったが、全国の流行予測調査では毎年約30%前後なので、全国と比較すると高かった。
まとめ

日本は2015年3月にWHOより麻しんの排除状態にあることが認定されたものの、輸入感染は避けられず、県内でも過去5年間で3例(内1例は修飾麻しん)発生している。2019年に発生した1例は国内(県外)にて感染している。2019年は全国で744例の麻しんが発生しており、過去5年間で最多であった。

麻しんを流行させないためには、2回のワクチン接種(1歳児及び小学校入学前1年間の者)をすること、かつワクチン接種率95%以上を維持することが重要とされている。2018年度の宮崎県のワクチン接種率は、第1期が97.9%、第2期95.3%であり、どちらも95%を上回っていた。

2015年以降、全国において発生している麻しん患者の7割は成人であるが、宮崎県においては15〜19歳の抗体保有率が低いことから、この年齢での流行のリスクに注意する必要がある。今後は、この年齢の抗体保有率を上げることが課題であると考えられる。


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