2 先シルル系
五ヶ瀬川上流鞍岡付近の祇園山からその北東の中登岳(ちゅうのぼり)にかけて、
シルル−デボン系に接してレンズ状に分布する深成・変成岩類がある。これは鞍岡火成岩(神戸、1957)とよばれているもので、
その西の延長は熊本県緑川上流の湯鶴葉(ゆずるは)付近に、東の延長は大分県の
九折(つづら)付近から東北東の三国峠付近へと断続的に露出している。熊本県の八代火成岩類、
四国の横倉火成岩類・三滝火成岩類も同様の性格のもので、秩父帯の中でこれらの露出する地帯は黒瀬川構造帯とよばれている。
鞍岡火成岩類は大部分圧砕花崗岩からなり、その他花崗岩質片麻岩、黒雲母片岩、角閃岩などを含む。
比較的圧砕されていないものは中粒〜粗粒の花崗岩質岩で、一部は花崗閃緑岩質である。これらの岩石は周囲の二畳・三畳系、
ジュラ系、下部白亜系とは断層で接するが、シルル−デボン系との関係はよくわからない。
しかし、本県ばかりでなく他の各地でもこれらの岩体が常にシルル−デボン系を伴うこと、
シルル−デボン系が接触変成作用を受けていないこと、これらの火成岩の地質年代が4〜
4.4億年(場合によってはもっと古い)を占めることなどを考えあわせると、シシル紀以前の岩石である可能性が強く、
シルル−デボン系とは断層関係にあることが推定される。おそらく中生代の激しい造構運動によって、
シルル−デボン系とともに地下深所からもたらされて現在の位置を占めるに至ったものであろう。