日南地区

 日南市・南那珂郡一帯では宮崎層群分布地域および日南層群分布地域にガス徴がある。

 本地域でも宮崎地区と同様に、昭和30年代前半に宮崎層群最下部層のガスを対象として種々調査・探鉱が進められたが企業化には至らず、一部で付随水の温泉利用が行われたに過ぎなかった。

 本地域の日南層群は、岩相的には頁岩の卓越する日南亜層群および砂岩の卓越する酒谷亜層群に区分されるが、全般に構造が複雑で断層・褶曲も多い。これを傾斜不整合で覆う宮崎層群は、日南海岸北部では下位より双石部層・木花互層・内海部層・戸崎鼻部層に、また南部の日南付近では下位より双石部層・郷の原部層・東郷互層に区分されている。各々の岩相をみると、双石部層は主に礫岩・砂岩等の粗粒岩よりなり、層厚は300〜500mである。郷の原部層は淡灰色泥岩を主とし固結が進んでいる。北郷町付近では600〜700mと厚く、南および北へ次第に薄くなる。木花互層と東郷互層は砂岩・泥岩の互層で、北部の砂岩勝ちの後藤が木花互層、南部のやや泥岩勝ちの互層が東郷互層である。両者ともおよそ3,000mの層厚を有すると推定される。内海部層は主に層理に富む泥岩と砂岩との細互層であり、上部は砂岩量を増して戸崎鼻部層へ移化する。層厚は両者合わせておよそ1,000mである。本地域でも宮崎層群は一般に北北東の走向を有し東へ10°〜20°と緩く単斜しているが、基底付近では所により50°近い急傾斜を示すこともある。青島以南の宮崎層群の岩石は、いずれもかなり固結が進んでいるが、最下部の双石部層は南部で未固結の部分があり、この部分が最も有望なガス層と考えられている。双石部層の上限温度は第18図に示されているが、このうち固結度をも考慮すると日南市富土原以南の双石部層が開発の対象といえる。

 本地域では昭和53年に北郷町が同町大藤地区で温泉ボーリング(R−1号井)を行ったが、この結果双石部層を590mでとらえ、さらに780mで基盤の日南層群に達している。この坑井からの産出量は初産ガス量2,245Nm3/日(31.5℃)水量1,045kl/日(48.2℃){いずれも自噴}であった。その他本地区のガス・水の成分は第8表に示すとおりである(第19図)。このうちガス成分をみると、宮崎層群基底部のガスでCH4が約70%、CO2が約30%となっており、宮崎市以北のものとは趣を異にしている。また北郷町のR-1号井の例から推定される地下の温度分布はT(℃)=17.8+0.04666(D-11.1){Dは深度:m}で地温勾配は100m当たり4.66℃と、他の地域と比べ著しく高くなっている。これらのことからCO2は火成作用の産物と考えられており、宮崎層群基底部のガスは他源的なガスであるといえる。

 一方日南層群分布地域では砂岩は堅く固結しているものの断層が多く発達しており、ガスはこの断層破砕帯中の賦存しいると思われる。ガス徴のある平佐・石波等の鉱泉では自然湧出であるにもかかわらず水温が各々21.6℃・18℃と高く、この地域の地温勾配が大きいことと矛盾しない。

 先にも述べたとおり本地域にも現在ガスを直接的な目的とする坑井はなく、もっぱら付随水の温泉利用という小規模な利用にとどまっている。本地域のガス付随水中にはヨウ素成分も少なく、ガス質もCO2や微量ながらH2Sが含まれるなど、開発利用に際しての今後の課題も残されているが、温泉を中核とした地域エネルギー的なガスの利用等も検討されており、今後の本格的な開発が期待されている。

加久藤地区

 えびの市加久藤付近では数10年前から天然ガスが民家で利用され、昭和20年当時には上総掘によって21井が掘削され、単井当たりのガス量は4.4m3/日であったという記録があるが、その後井戸は荒廃するにまかされている。

 本地域には加久藤層群と呼ばれる更新世の湖成堆積物が分布しており、ガス層は深度50〜75mの上層と96〜140mの下層がある。