4−4 諸塚層群の地質構造
諸塚層群の分布域では,砂岩優勢層と,乱雑層または泥岩の優勢層が,北西傾斜の衝上断層を境として交互に分布している.日之影町から椎葉村までの地域では,砂岩優勢層の分布幅が広いため,乱雑層または泥岩の優勢層を鍵層とすることで,全体の分布形態と地質構造を把握することができる.椎葉村上椎葉西方の銚子笠から十根川,諸塚村宮の元,日之影町日之影にかけて分布する乱雑層優勢層は,その北縁部に玄武岩質火山岩類およびチャートを伴う場合がある(斉藤ほか,1996). これらの玄武岩質火山岩類が乱雑層中のブロックとして産出するのか,全体として薄い衝上シートとして産出するのかは確かめられていない.この乱雑層優勢層と,仏像構造線の北側に沿う秩父帯(三宝山帯)の石灰岩卓越層は,銚子笠付近では1.6 kmと近接しているが,日之影付近では6 km程度も離れて分布しており,両方の地層がお互いにゆるやかに斜交していることが確かめられる.この乱雑層優勢層は,大崩山環状岩脈内へも延び, 大崩山花崗岩体に貫かれて切られている.この乱雑層は,北川町下赤,鐙,北浦町付近の分布幅の広い,乱雑層や泥岩の優勢層へ延びるように見える. しかしながら,椎葉村上椎葉付近では長石質砂岩(斉藤ほか,1996),北浦町付近では石質砂岩(奥村ほか,1985)であることが指摘されているので,砂岩組成が漸移するのでなければ,両者は別の地層の可能性がある.
椎葉村不土野峠北方の泥岩優勢層は分布幅が広く,乱雑層や玄武岩質火山岩類を伴う.この泥岩優勢層は, 北東へ向かうにつれて分布幅が狭くなり,諸塚村七ツ山, 日之影町日之影南方まで分布する.この泥岩優勢層は環状岩脈内では,北方町矢筈岳北から北東へ延び,花崗岩体に貫かれた後,延岡市下祝子南方を通り,北川町尾平まで延びると考えられる(村田,1998a).
椎葉村上椎葉付近やその南方には,分布幅の狭い泥岩優勢層や乱雑層優勢層がいくつかみられる.また,諸塚村黒葛原付近では,分布幅の広い泥岩優勢層がみられ, 北東方に向かって塚原衝上断層に切られる.これらの泥岩あるいは乱雑層優勢層は, 環状岩脈内の北方町二股北方から,北川町熊田北方へ延びる3つの泥岩優勢層に延長する可能性がある.これは, 塚原衝上断層の上盤で,本来,連続していた地層が,日之影南方で削剥されてしまって,分布の連続が途切れているものと判断される.同様に,延岡市宮ヶ谷を通る砂岩優勢層は,北東走向で熊田付近へ延びた後,塚原衝上断層によって切られ,分布が途切れる.これらは,中角度〜高角度の,砂岩優勢層や,乱雑層あるいは泥岩優勢層などを境する衝上断層が,30°以下と低角な塚原衝上断層によって切られ,異なる削剥レベルをみていることで,説明される.なお,これらの連続関係についても,両者の砂岩組成が異なるとされているため,砂岩組成が漸移するのでなければ,別の層である可能性がある.