4−11 日向層群鰐塚山層・山之口層のデュープレックス

 宮崎市西方の,前述した内ノ八重デュープレックスの西側に分布する日向層群でも,デュープレックスと思われる構造が認められる.山之口町青井岳周辺の,五反田衝上断層の下盤の砂岩優勢の鰐塚山層は,衝上断層に近接したところでは,衝上断層に対して約30゜程度斜交した走向をもつ(第21図 77kb).このような斜交した走向は,内ノ八重デュープレックスの本来の傾斜変化が走向変化としてとらえられるというこの地域の特殊性によるものと考えられる(村田,1992).この走向変化は,本来の傾斜変化が反映されており, 同じ層準の地層が繰り返し分布していて,より小規模な衝上断層とルーフ衝上断層にあたる五反田衝上断層との傾斜変化が,ここに表現されているものと判断された(村田,1992).

 一方,高城町岩屋野付近の,岩屋野衝上断層の上盤の鰐塚山層は,下限を岩屋野衝上断層,上限を別の衝上断層で切られており,互いにほぼ平行な2つの衝上断層に挟まれて分布している.二つの衝上断層に挟まれたブロックの中では,鰐塚山層の走向・傾斜はそれぞれの衝上断層面に対して斜交している. また,上盤側の鰐塚山層では,岩屋野西方では東に凸を向けた走向変化や,岩屋野北方で西に凸を向けた走向変化などが見られる(第21図 77kb).岩屋野衝上断層の断層面は,この範囲では,比較的平面的であるため,これらの走向変化は,後生的な屈曲ではなく,本来的な衝上構造を反映しているものと考えられる.この鰐塚山層は, 岩屋野衝上断層をフロアー衝上断層,上限の衝上断層をルーフ衝上断層とするデュープレックスを作っていると考えるとうまく説明することができ,背斜状スタックあるいは前縁地傾斜デュープレックス, 側方ランプ(lateral ramp)などのパターンが地質図に表現されていると考えられた(村田,1992)(第21図 77kb).

 岩屋野衝上断層の下盤の山之口層についても同様に考えてみると,走向・傾斜の変化から少なくとも4つの,より小規模な衝上断層の存在が推定され,それぞれの衝上断層に挟まれたブロック内でデュープレックス構造により,地層が繰り返して分布しているものと推定された.鰐塚山層・山之口層のデュープレックスの場合でも,荒谷層の場合と同様に,小規模な衝上断層がルーフあるいはフロアー衝上断層に漸近するという事実が確認されているわけではなく,ピギーバック型の衝上順序で形成されたデュープレックスが,後からの衝上断層によって切断されたりして不完全なものであると思われる.しかしながら,このような場合でも基本的にデュープレックスが幾つも積み重なっているということで,累重デュープレックス(stacked duplex)ととらえてもよいと考えられた(村田,1992).