4−12 日南層群の地質構造
日南層群については, 加藤ほか(1984),加藤(1985),坂井ほか(1984),Nishi(1985),坂井(1985,1987)や酒井(1988a,b)などによって,放散虫・有孔虫を用いた詳細な研究がなされている.日南層群は,生層序が成り立つ整然層と,乱雑層(メランジュ)とに分けられることが明らかにされている(坂井,1985,1992;酒井,1988a,b).日南層群に含まれるメランジュについては,坂井(1985,1987)や酒井(1988a,b)などによって,ブロックおよび基質の詳細な堆積相,生相などが調べられている. 坂井(1985),坂井ほか(1987)によると, スランプ褶曲,含礫泥岩,液状化による混合層などの存在が報告されたり,海底地すべりに起因すると考えられる正断層の存在が報告されており,基本的にオリストストロームと考えられている.また,酒井(1988a,b,c,1991)によっても,堆積相および生相解析から,浅い堆積物と考えられるブロックが,より深い堆積相を示す泥岩の中に含まれていることが指摘され,メランジュは基本的にオリストストロームであることが指摘されている. また,一部のオリストストロームは,後の変形を受けたテクトニックメランジュとされている(酒井,1988b).宮崎県20万分の1地質図の日南層群で砂岩,砂岩泥岩互層,泥岩とされたものが,坂井(1985),坂井ほか(1987)の整然層に相当する.また,同地質図で乱雑層とされたものが, 坂井ほか(1987)の乱雑層にほぼ相当するが,一部,異なっている部分がある.このように区分すると,日向層群と日南層群は基本的に同様の堆積物ととらえることもできるが, 厚い砂岩層も日向層群のように構造的なユニットとして,走向方向に追跡できるのは一部に限られている.さらに,日南層群分布域には,串間市石波付近や,都井付近に,北西走向の高角の断層が存在し,ブロックに分かれている.これらの北西走向の断層の変位センスについてはよく分かっていない.日南層群分布域には,日南市飫肥北西方や南西方で,地層の急激な走向変化から断層の存在が予想されるが,どういう断層によるものか,地質構造としてよく把握されていない. メランジュと整然層の関係についても,断層で接していることが予想されるが,日向層群分布域のように衝上断層であるのかどうかよく分かっていない.また,メランジュの成因についても,さらに検討する必要があるものと考えている.