3. 金 属 鉱 床

 

(1)含銅硫化鉄 (2)マンガン (3)錫・銅・鉛・亜鉛など (4)金・銀・アンチモニーなど

(1) 含銅硫化鉄

 県の北部には槇峯鉱床をはじめとして、含銅硫化鉄鉱を産するところが多い。鉱床は一般に層状含銅硫化鉄鉱床と呼ばれる形式のもので、鉱床は多くの場合母岩の地層面にほぼ平行して層状ないしレンズ状をなす。

 含銅硫化鉄鉱床は本邦の他地方にも数多く存在する。宮崎県以外では四国の別子鉱山などのように、鉱床は三波川結晶片岩などの変成岩が分布する地帯に存在することがもっとも多い。これに対し宮崎県では中・古生界を主とする秩父帯及び中・新生界の四万十帯に所在し、特に四万十累層群地帯に多い。

 四万十累層群は砂岩・泥質岩およびこれらの互層を主とし、塩基性岩類を伴っており、全般に低度の変成作用を受けている。含銅硫化鉄鉱床は四万十累層群のうち、諸塚層群・神門層群などの塩基性岩類に富む千枚岩帯中に分布する。清島(1980)は塩基性岩類と鉱床との関係について、塩基性岩類が層状の凝灰岩質型と塊状の玄武岩溶岩質型に区分でき、前者には大規模な層状鉱床を伴う場合が多く、含銅品位も比較的高いのに対し、後者ではレンズ状で鉱物組成も硫化鉄鉱を主とし、含銅品位も低い、としている。

 含銅硫化鉄鉱床の成因については、かつては地層が変成作用を受け、この変動期に塩基性火成岩が貫入し、この火成作用に由来して鉱床が生成されたと考えられていたが、現在では地層が地向斜で堆積した時に塩基性の海底火山活動があり、この火成作用に由来して鉱床が地層とともに沈積し、後になって変成作用を受けたものと考えられており、宮崎県内の鉱床に関しても、この可能性が強い。

 含銅硫化鉄鉱床の鉱石は一般に黄鉄鉱もしくは磁硫鉄鉱を主とし、これらと黄銅鉱が緻密な塊状集合体をなすが、少量の閃亜鉛鉱・磁鉄鉱なども伴うことがある。微量成分としてはコバルト・ニッケル・金・銀などを伴い、槇峯・三ヶ所などは含金量も多かったようである。また鉱床が花崗岩類等による熱変成を受けると、黄鉄鉱が磁硫鉄鉱に変わり、硫黄品位が低下すると言われており、槇峯鉱山の例では鉱床上部の黄鉄鉱を主とする鉱石が、鉱床下部では磁硫鉄鉱を主とする鉱石に変わっているという傾向が認められている。

 以下、過去稼行されたことのある含銅硫化鉄鉱床のうち、主な鉱床について概況を列挙する。

第10表 主な含銅硫化鉄鉱床

四万十帯に
分布する鉱床
1 槇 峰 3 吉 本 5 速 日 7 大河内 9 祝 子 11 鏡 山
2 猿 渡 4 岩 井 6 五 色 8 狩 底 10 八 戸    
秩父帯に
分布する鉱床
12 三ヶ所 13 椎 葉