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木材の豆知識

木材を乾かす(その3)−理想的な含水率−

乾燥過程で木材になにが起きる

 木材の主な組織は、中空となっている「道管」(広葉樹)又は「仮道管」(針葉樹)で、長さ3〜5mm程度です。これらの細胞の細胞壁は、セルロース分子の隙間や周囲をリグニンが埋めるような構造となっています。水分は、細胞の中空部分に水滴として存在する「自由水」と細胞壁に化学的に結合した「結合水」に分けられます。 木材が乾燥すると、最初に自由水から無くなります。自由水が全て無くなり結合水のみとなった時の含水率は30%程度です。中空にある水滴が無くなるだけなので、含水率がいくら変化しても木材の性質は何も変わりません。しかし、含水率30%を下回り、結合水が無くなるとセルロース分子から水分子が切り離されます。そのため、セルロース分子の配置が変化し、細胞壁自体の形が変わり、結果として木材自体の寸法が収縮します。
針葉樹の細胞構造の図
図1 針葉樹の細胞の構造
木材に含まれる水分は自由水と結合水が存在する 
   

含水率15%が目安となる理由

 さて、前回、木材は含水率15%まで乾燥して使うのが望ましいと、述べてきました。その理由を説明しましょう。  木材を室内に放置するとゆっくりと、確実に乾燥します。図2は心去りの柱材、つまり、幹の中心にある髄を含まない柱材を、室内で天然乾燥した時の含水率推移を示したものです。約3カ月目以降の含水率はほとんど変化していません。この安定した木材の含水率を「平衡含水率」と言います。
木材の含水率(%)と天然乾燥日数(日)を示したグラフ
図2 木材の含水率の変化
 一年を通した日本国内の平衡含水率の平均値は15%とされています。平衡含水率より含水率の高い木材は水分を放出して収縮しますが、含水率の低い木材は水分を吸収して膨張します。こうして一定の平衡含水率に到達します。
 木材の膨張と収縮を表した図
図3 木材の膨張と収縮
 
 木材はその環境に対応した平衡含水率で安定するので、あらかじめ想定される含水率まで乾燥させて使うのが、理想的な木材の使い方だと言えるでしょう。(おわり)
 
 (材料開発部長 農学博士 小田久人)