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木材の豆知識

建物に使う木材の強い弱いはどのように決めるのでしょうか

木材の強さの種類とは?

 木材の強さには、縦圧縮強さ、縦引張強さ、曲げ強さ、せん断強さ、めり込み強さなど色々な種類があります。これらの値は、めり込みの様な特殊な場合は例外として壊れるときの荷重を用いて算出します(図1参照)。勿論、木材の強さは方向によって異なるので、各強さの値は異なります。具体的に言うと、建物に使う木材(梁・桁・柱など)では“曲げ>圧縮>引張>めり込み>せん断”の順になります(図2参照)。また、これらの値は、言うまでもなく樹種によっても大きく異なります。
木材の荷重と変形量の関係を示した図
図1 木材の荷重と変形量の関係
木材の強さの順番を示した図
図2 木材の強さ
   

木材の「強い」、「弱い」とは?

 ここで、建物に使う木材(梁・桁・柱など)の曲げ性能を対称に、「強い」、「弱い」について考えてみましょう。表1の曲げヤング係数(平均)、曲げ強さ(平均)、基準強度をご覧下さい。
表1 建築に使う木材(梁、桁、柱など)の曲げ性能
樹種  個数  曲げヤング係数  曲げ強さ  
 平均
(kN/mm2
変動係数
(%)
 平均
(kN/mm2
 変動係数
(%)
 基準強度
 ベイマツ  1,000  11.6 20  45.3  35.4  22.8 
 ソ連カラマツ  270  12.6 19.1  51   28.8 26.7 
ヒノキ   819  10.5 13.3   53.2 20.4  35.5 
カラマツ   1,215  8.9 20.7  42.1  24.7  26.5 
アカマツ   769  10.2 22.3  43.7  33.5  27.3 
ベイツガ   466  10.3 21.9  43.3  36.1  17.3 
エゾマツ   1,000  10.1 17.7  41  24.4  24.8 
トドマツ  605  9.3 15.4  39.5  21.1  24.8 
スギ   12,213  7.4 23.6  39.8  21.5  26.4 
ヒバ   315  9.8 14.7  45.2  21.9  29.7 
      
  
 これらのうち建築に使う木材の「強い」、「弱い」はどの値の大きさを言うのでしょうか?勿論ヤング係数ではありません。では、曲げ強さ(平均)でしょうか?これも違います。正解は基準強度です。詳細な説明は割愛しますが、木材の強さは同じ樹種でも1本1本で異なり、ばらつきがあります。そのため、安全性を考慮して、実大材の弱い方から5%目の強さを基準強度として(図3参照)、建物の設計に用います(JAS材の場合、建設省告示1452号)。
木材の強さの分布を示した図
図3 木材の強さの分布
 実は、この基準強度と曲げ強さ(平均)は、表1に示すように必ずしも対応していません。例えば、同表におけるスギの曲げ強さ(平均)は弱い方から2番目の値ですが、基準強度では真ん中くらいの値になります。これは、主としてバラツキ(変動係数)の差異に基づくもので、たとえ平均値が小さくても、バラツキが小さければ設計用の基準値(基準強度)は高くなる、ということを意味しています。このように、建物につかう木材の強さは安全を考慮した値であり、実用上平均値を用いることはありません。
  補足ですが、構造材の性能を「強い」、「弱い」だけで判断し、材料選択を行うことは必ずしも適切とは言えません。設計用の基準値(基準強度)は、あくまで構造設計のベースとなる値であり部材の断面寸法を決定するための値なので、
「強い」、「弱い」ではなく「数値が明らかにされていること」が重要なのです。
(木材加工部長 農学博士 荒武志朗)