第2章 開発・保全と地質
2.地 滑 り・崩 壊
地滑り・崩壊は包括的に斜面における岩塊・土塊の下方移動として把えられるが、本邦では一般的に地滑り現象と、山崩れ・崖崩れなどの崩壊現象とは区別して取扱われることが多い。斜面において岩層の表層部ないし表層二次堆積物の一部若しくは全部の、比較的大きな岩塊・石塊が、ほぼ一体となって緩慢に滑り下る現象を地滑りと呼び、岩層表層部ないし表層二次堆積物の一部若しくは全部が、破砕された岩塊・土塊として突発的に崩れ落ちる現象を山崩れ・崖崩れと呼んでいる。山崩れは山地斜面に発生するもの、崖崩れは丘陵・台地の縁辺部のように比較的高の小さい急斜面に発生するものとして、それぞれ区別される。最近では道路・住宅などの構造物建設に伴う人工斜面が増加しており、このような斜面に発生する崖崩れを特に法面崩壊と呼んでいる。地滑り・崩壊とも降水ないし地下水の挙動に関連して起こる場合が圧倒的に多いが、地震によっても発生する。本県では昭和43年のえびの・吉松地震時におけるシラス(ここでは加久藤層群の一部)斜面の崩壊がよく知られており、昭和36年の日向灘地震に際しても、日南海岸沿いの宮崎群砂岩塊の落石崩壊が発生している。
山崩れによる土砂が洪水時に濁流に合流するとしばしば土石流を生じ、渓間及び扇状地などに氾濫し、住家・施設などに大きな被害を与える。昔から山津波と呼ばれ、水害の中で最も恐れられているものである。土石流の特徴は、多量の岩屑に混じって巨礫が押流され、これが大きな破壊力を発揮すること、及び流速の弱まった場所に厚い堆積物を残留させることである。昭和47年7月豪雨における、えびの市真幸の土石流は本県最大級のものである。
昭和47年7月豪雨で発生した真幸の土石流