第４版　第２章　3 (5) 上部ジュラ系

３　秩父帯の中・古生界

（１）　シルルーデボン系	（２）　二畳・三畳系	（３）　蛇紋岩
（４）　三畳系	（５）　上部ジュラ系	（６）　下部白亜系

（５）　上部ジュラ系

　　まだ化石による明確な証拠はないが、岩相や構造的位置からみておそらく上部ジュラ系に属すると思われる地層に大石層と財木層とがある。　

大石層

　　大石層(斎藤・神戸,1954)はシルル－デボン系の祇園山層の南に断層で接して分布する。地層の走向波東北東－西南西で北に傾斜する。本層は頁岩に富み、砂岩および礫岩を伴う。砂岩は粗粒ないし中粒の長石質石英砂岩で、頁岩との互層部では層理が明瞭である。礫岩の礫は拳大以下の円礫で、おもにチャートからなり、砂岩・珪質頁岩・花崗岩・石英斑岩をまじえ、祇園山層に特徴的な青緑色凝灰岩もかなり含む。礫岩の質は砂質である。なお、大石層の南縁部付近からはアンモナイト　Aulacostephanus(Aulacostephanus)(？)sp.　を産する(松本・平田,1970)。これは不完全な１個体のみであるが、本層が上部ジュラ系に属する可能性を強くしている。

財木（たからぎ）層

　　十根川の上流、椎葉村財木付近から東西に細長くレンズ状をなして分布する。分布の北限及び南限は断層で境される。地層の走向は北東－南西で北西に６０～７０°傾斜し、周辺の二畳・三畳系に比べると擾乱が少ない。一般に層理の明確な砂岩頁岩互層からなり、頁岩中には植物の破片や炭質物を含む。本層は従来時代未詳の古生層とされていた(宮崎県,1972)が、岩相的特徴および構造的位置からこれを上部ジュラ系とみなした。