3 秩父帯の中・古生界

(1) シルルーデボン系

(2) 二畳・三畳系

(3) 蛇紋岩

(4) 三畳系

(5) 上部ジュラ系

(6) 下部白亜系

 

(6) 下部白亜系

  県北部の五ヶ瀬地域に断片的に分布する。これらは岩相・産出化石・構造的位置などから、戸川層・高屋山層・笠部層・芝ノ元層・高畑層・田原層に区分される(寺岡,1970)。概して北に位置するものほど地質時代が若い(第4図 49kb)。

戸 川 層

  先シルル系と断層で接してその北側に細長く分布する。県内の秩父帯の白亜系のうちでは最も南部に位置する。 地層の走向は北東部では北東ー南西性であるが、南西部では北西ー南東性に移り変わる。いずれも北に傾斜する。 層厚は900m以上。主として頁岩および砂質頁岩からなり、頁岩砂岩薄ー中互層・砂岩およびごく少量の礫岩を伴う。 頁岩・砂質月頑は概して層理に乏しく“Cyrena shiroiensis YABE & NAGAO”, Cladophlebis exiliformis(GEYLER), Sphenopteris sp.などの領医師型動植物化石を産する。砂岩の多くは中ー細粒、灰ー暗灰色のグレイワッケ砂岩であるが、 中ー粗粒、灰白色の長石質石英砂岩もあり、後者は数10cmー10mの厚さをもって挟在する。 礫岩はチャート・砂岩・粘板岩・流紋岩・安山岩・花崗岩などの細ー小礫、ときに中礫を含む。 量的にはチャートが圧倒的に多く、花崗岩はごくまれである。以上の特徴から本層は大分県大野川盆地の山部層や 熊本県八代地域の川口層(高知統)に対比される。

高 屋 山 層

  戸川層の北東延長部、跡取川の南に細長く分布する。周囲の二畳・三畳系とは断層関係にある。 頁岩・砂岩からなり、ときに植物化石を産する。本層の地質時代については明らかでないが、 岩相や構造的位置から戸川層に相当する可能性がある。

笠 部 層

  戸川層の北に分布する。層厚850m内外で、下部は礫岩からなり、笠部付近では戸川層の頁岩を不整合に覆う。 礫はチャート・砂岩・粘板岩・頁岩・流紋岩・安山岩などの中ー大礫、ときに巨礫を含む。 上部は頁岩を主とし、砂岩頁岩互層および砂岩を伴い、ときに礫岩を含む。 頁岩中からは海生二枚貝・巻貝の化石を産する。上部の基底部には赤色頁岩がある。 本層は戸川層の上位にあり、一堆積輪廻をなしていることから、有田統に対比される可能性がある。

芝 ノ 元 層

  笠部層の上に整合に重なる。下部は数100mの層厚をもち、礫岩と砂岩の熱い互層からなる。 上部は約700mの層厚をもち、主として頁岩からなり、礫岩砂岩互層および砂岩頁岩互層を伴う。 上部の頁岩からは海生二枚貝・巻貝の化石を産する。本層も一堆積輪廻を示し、海生貝化石を産することから、 宮古統下部階に相当するものと思われる。なお、戸川層・笠部層・芝ノ元層は軸が北東に沈下した1向斜構造をなす。

高 畑 層

  三畳系室野層の東、高畑付近および鏡山の南斜面に分布する。大部分は基質が赤ー赤褐色を呈する礫岩からなり、 少量の砂岩を伴う。礫岩は砂岩・粘板岩・チャート・緑色岩・流紋岩・安山岩などの中ー巨礫からなる。 高畑付近の本層の分布の北縁には灰ー灰緑色砂岩があり、ときに細礫礫岩や頁岩薄層を挟む。 この頁岩からはPetrotrigonia cf. pocilliformis, Astarte subsenecta, アンモナイトなどを産する。 高畑付近の本層は幾筋もの断層または二畳・三畳系の衝出眼帯により切られているが、 一部では古生層を不整合に覆い、全体として北東ないし東北東に沈下する向斜構造をなすものと思われる。 本層は赤色岩で特徴づけられること、二畳・三畳系を不整合で覆うことなどから、熊本県の八代層(宮古統上部階)に対比される。

田 原 層

  秩父帯の北縁部に分布し、断層で北は祖母山火山岩類に、南は二畳・三畳系に接する。地層の走向はほぼ東西で、 北に数10°傾斜する。本層は礫岩を主とし、中ー細粘砂岩・砂岩頁岩薄互層及び頁岩を伴う。 礫岩は流紋岩・安山岩・花崗岩・花崗斑岩・閃緑岩・砂岩・粘板岩・チャートなどの円礫(中ー大礫時に巨礫)からなり、 淡緑色を呈する。本層からは化石は産しないが、大野川層群や高畑層とは礫岩の色や構成物が異なること、 秩父帯の白亜系中最北部に位置することなどから、八代地域の砥用(ともち)層(宮古統)の基底部か、 大膠盆地の田野層(ギリヤーク統)に相当するものと思われる。