宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
坂元棚田

坂元棚田についてのお問い合わせは
日南市役所農政課
宮崎県日南市中央通1―1―4
TEL 0987―31―1132

棚田オーナー制度で交流を深める
坂元棚田
●日南市酒谷(さかたに)地区

日南市酒谷地区にある坂元棚田は、現在、13戸の農家が70枚の水田を管理。昭和10年頃に開かれた棚田で歴史は新しいが、普通期米のヒノヒカリを「かげ干し」で乾燥させるなど、昔ながらのおいしい米づくりにこだわっている。この酒谷地区で、全国でも珍しい取り組みとして、棚田のオーナー制度が注目を集めている。

一人あたり1アール、年会費3万5千円で坂元棚田の「オーナー」になると、収穫した米30kgを受け取ることができる。田は、普段は地元の人が管理するが、主に都市部に住むオーナーたちは休日などに自分の田や畑にやってきて、地元の人々とのふれあいを楽しみながら、田植えや草取り、稲刈りなどの作業に参加。オーナーには、ふるさとに帰ってきたような気持ちになると喜ばれている。

作業風景

オーナーたちの雰囲気は、まさに和気あいあい。ベテラン組の中には、自分の田畑の手入れはもちろん、それぞれの得意分野に応じて、水道を引いたり、休憩小屋を建てたり、広報を担当したりと自発的に活動する人も多い。休日を棚田の景観の中で自分のペースで作業をするうちに、見知らぬ人同士でもすぐに親しくなれるという。

「初めて棚田を見に来た時、素晴らしい景観に感動してオーナー制度に申し込みました。宮崎市の自宅から月に1〜2回、ここへ来るのですが、メンバーたちと顔を合わせるのが何よりの楽しみです。最近、農家を改装した宿泊所もできましたので、泊まりがけで訪れ、みんなと語り明かすこともあります」(オーナー会会長・恒吉明さん)
「実家が農家でしたので子供の頃から手伝いはしていたのですが、就職で都会に出てから農業とは無縁の生活でした。数十年ぶりに田んぼに戻ってきた感じで、楽しんでいます。将来は炭焼きにもトライしたいですね」(都城市・小林覚さん)

オーナーの福永幸人
大型のサイドカーに愛犬を乗せて棚田を訪れたオーナーの福永幸人さん。「お客さんとしてではなく、人様の田で遊ばせてもらうという気持ちが大切」と語る。

棚田での農作業や地元の人たちとのふれあいを通じて、充実した時間と元気を手に入れる都市部のオーナーたち。そして、そんなオーナーたちをいつでも温かく受け入れてくれる地元の人たち。四季折々にいろいろな表情を見せる坂元棚田で繰り広げられる交流は、人と人の結びつきが弱くなった現代社会に新しい息吹を吹き込んでいる。棚田にたなびく青々とした稲穂をゆらす夏の風のように。

休憩小屋 貯水槽で遊ぶ親子
オーナーがみずから建てた休憩小屋で話がはずむ 貯水槽で遊ぶ親子。山の谷川から引いた水は、驚くほど澄んでいた
石垣の草とり作業 坂元のホームページ
田植えを前に行われた、石垣の草とり作業。手を動かしながらも、棚田に笑い声が響く。 ホームページでも情報を発信中。オーナーへの連絡、交流掲示板、風景、歳時記、制度の紹介など充実した内容だ。

2006年秋、全国棚田サミットを開催

酒谷地区の、地域を挙げての取り組みが評価されて、2006年秋に開催される「第12回全国棚田サミット」の日南市での開催が決定した。棚田がある中山間地が抱える問題は、過疎化や後継者不足をはじめ多岐にわたるが、そうした中で、地元の魅力を掘り下げることで都市部から多くの人を呼び寄せている酒谷地区は、全国の棚田のまちに勇気を与えている。

棚田の風景