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宮崎牛や完熟マンゴーなど世界に誇るブランド農畜産物を有し、農業産出額は全国第5位と、全国有数の食料供給基地として重要な役割を担う本県。
一方で、人口減少社会の到来に伴い、農業者の減少や高齢化が進行しており、生産力の低下や熟練農家の技術喪失など産地の衰退が懸念されています。
加えて、TPP(環太平洋経済連携協定)などによる国際競争なども激化している中で、従来の生産方法や考え方だけでは、本県の農業・農村の活力維持は難しく、時代の変化に対応した生産構造への転換が重要な課題となっています。
そこで、これからの本県の農業を支えていくのがスマート農業。
今回は、そんなスマート農業についてご紹介します。
ICT(情報通信技術)やロボット・AI(人工知能)などの先端技術を活用した農業のことです。
ドローンによる農薬散布や自動運転トラクターなどスマート農業技術の活用により、無人化・省力化や規模拡大・生産性の向上が可能となります。
▲自動収穫機など
▲牛の発情発見装置
一見便利なようで、分からないことも多いスマート農業。
そこで県では、令和元年12月に、スマート農業の将来像「ひなたスマートアグリビジョン」をはじめ、スマート農業に関するさまざまな情報が詰まった「みやざきスマート農業推進方針」を策定しました。
その実現に向けた取り組みを展開することで、スマート農業の導入を後押ししています。
アシスト機能や自動走行の技術などにより、誰もが取り組める農業環境を整備するとともに、ICTを活用した農業技術の「見える化」を図ることなどにより、農業のユニバーサル化を実現します。
畜産・露地園芸・施設園芸などのさまざまな分野に適応した技術を活用することで、超省力・高効率で高収益な農業を実現します。
棚田への水管理システムの導入や、ICT自動捕獲システムなどを活用した野生鳥獣による被害減少などにも取り組み、中山間地域など条件不利地域での持続可能な農業を実現します。
弊社は、ほうれん草を皮切りに、大規模な露地園芸の機械化や分業体制づくりを実践しています。
きっかけの一つ目は、契約している農家さんの負担軽減です。ほうれん草栽培は、種をまく時期によっては、栽培が難しい期間があります。この期間の栽培を弊社で行い、農家のリスク負担を軽減することにあわせて、最新技術の導入による生産性向上を図りたいと考えたからです。
二つ目は、農家に対し、ICTやAI活用によって弊社が得た栽培技術情報の提供や、農作業の分業を通じて、最新農機の利用による生産性向上に役立てたいと考えたからです。
▲遠隔操縦により無人で動くロボットトラクター
まずは、無人化や省力化により生産性が向上することです。
また、今まで頼りとしていた長年の経験や勘など数値化できなかったものが、ICTやAIの活用により「見える化」を図ることができるようになりました。
さらに、一般農家が取得せずともスマート農業機器を用いた受託事業の構築により、地域農業基盤を維持し続けることもメリットです。
スマート農業を導入することで、誰でも取り組める農業環境を作ることができ、作業熟練者の新たな活躍の場をつくることができます。
それによって、これまでの農業よりも、作業に費やす時間が減り、仕事の幅が広がるようになります。
▲農薬や肥料を上空から効率よく散布できる農業用ドローン
操縦前の講習などで理解すれば、すぐに慣れます。
特別な技術は必要ないので、一般の農業機械の感覚と思ってください。
まずは、気軽に現場を見に来ていただきたいです。
導入を考えている農家にとっては、スマート農業機器は高額投資となるので、我々の経験や課題を共有することで、導入時のリスク軽減に役立ててほしいと思います。
未来を担う皆さんは、次世代農業の取り組みや魅力を肌で感じていただき、農業へ興味をもってもらえるとうれしいです。
夏場の暑さは、牛の乳量などに影響するので、対策をする必要がありました。
そこで、牛舎内の温度・湿度などの環境を、センサーとファンで自動制御できる次世代閉鎖型牛舎(※)の導入を検討しました。
次世代閉鎖型牛舎を導入するには、規模を拡大する必要があり、そのための労働力も必要になってきます。
その労働力を補うために、搾乳ロボットおよび牛の発情や一頭ごとの乳量などをパソコンで管理する個体管理システムを導入しました。
▲牛が自ら機器に入って搾乳する搾乳ロボット
牛たちは自ら搾乳ロボットに入ることを覚え、後から来た仲間に教え合うのだそうです。 |
次世代閉鎖型牛舎の導入により、牛舎内の環境が一定に保たれるので、夏場の乳量確保や繁殖性が向上しました。
また、搾乳ロボットを導入したことで、毎日欠かすことのできない搾乳に人手がいらなくなったことに加えて、乳量などのデータも自動でパソコンに取り込まれるので、牛の個体管理も容易になりました。
スマート農業に取り組むことで、さらなる規模拡大への夢にも一歩近づきました。
今回導入した牛舎や搾乳ロボットにより、快適な環境で、いつでも搾乳できることが、ストレスケアにつながっていると思います。
▲牛の届く範囲へエサを寄せる自動エサ寄せ機
▲巨大扇風機で常に空気の入れ換えを行う
次世代閉鎖型牛舎
※次世代閉鎖型牛舎 牛舎の壁面に給気用と排気用の換気扇を配置し、牛舎全体を均一な風で換気するシステム。 |
スマート農業は、日本の農業を守るために、避けては通れない技術です。
生産性や収益性が向上することに加え、家族と一緒に過ごす時間が増えることが最大の魅力だと思います。
お問い合わせ |
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農政企画課 0985(26)7426 |