県広報みやざき

忘れない そして前へ

2010年4月。本県畜産関係者は衝撃と、これから起こる出来事を想像し、深い悲しみを抱きました。家畜伝染病「口蹄疫」の発生です。
本県都農町での初発生確認後、県下11市町村という広範囲に広がり、8月の終息宣言まで、297,808頭の家畜の尊い命が失われ、畜産業のみならず地域経済、県民生活に大きな影響を及ぼしました。

口蹄疫非常事態宣言

「拡大を止めることができない状況。非常事態宣言を発する。」県民にもイベントの延期や不要不急の外出を控えるよう呼びかけが行われ、危機意識を持って感染拡大防止に協力するよう求められました。

それまで口蹄疫の大規模発生はなく、経験が少ない中で、関係者は対応に苦慮しました。被害の最小化は、時間との勝負。畜産関係者、国・県・市町村職員、他県職員、自衛隊などにより昼夜を問わず殺処分が行われました。

8月の終息宣言後も、本県の戦いは続きます。風評被害によるブランドイメージの低下や旅行者・観光客の減少といったダメージからの回復、そして何より、畜産農家の再起。大切に育ててきた家畜を殺処分せざるを得なかったことに対する苦悩や経済的な不安から、将来畜産を続けていくべきなのかなど、さまざまな葛藤を抱えた方がたくさんいらっしゃいました。

それでも、畜産農家の皆さんはこの苦境にひるまず、再び前を向いて歩き始めました。

全国からの支援

前に進めたのは、たくさんの応援があったからです。全国から義援金や寄付金、多くの物資や資材の提供、激励の手紙や寄せ書き、千羽鶴などが届き、応援が力になることを実感する日々でした。

感謝 復興 前進

口蹄疫から2年後の2012年、復興を象徴する出来事がありました。口蹄疫の影響も残る中、5年に1度開催される「和牛のオリンピック」とも呼ばれる【第10回全国和牛能力共進会】で内閣総理大臣賞を受賞。これは2大会連続の受賞で、以降、4大会連続という偉業を達成しています。最近では、昨年10月の東京食肉市場まつりで、宮崎牛が提供和牛に選ばれ、大盛況を収めました。

忘れない

口蹄疫から13年が経過し、当時を経験した県民の記憶には深く刻まれているものの、口蹄疫を知らない世代も増えてきています。風化させないために、後世に記憶を引き継いでいくことが大切です。

〈第10回全国和牛能力共進会〉
〈第12回全国和牛能力共進会〉
〈東京食肉市場まつり2023〉
〈畜魂碑〉
〈埋却地のひまわり畑〉

口蹄疫が終息し、日本は口蹄疫清浄国となりました。県では、毎年2月を「家畜防疫強化月間」4月を「特別防疫月間」として位置付け、口蹄疫の防疫演習を行っています。

しかし、家畜伝染病は口蹄疫だけではありません。畜産県である本県は、常に脅威と隣り合わせなのです。

身近な家畜伝染病の一つに「高病原性鳥インフルエンザ」があります。渡り鳥の飛来が本格化する10月頃から発生リスクが上昇します。発生した場合、養鶏場の鶏の全羽殺処分、消毒などが行われるほか、近隣養鶏場の移動制限、出荷制限なども行われます。卵価格の上昇など、県民生活にも大きな影響を与えます。

近年では、「豚熱」も畜産関係者の頭を悩ませています。2023年8月、佐賀県で九州初となる発生が確認され、九州全県においてワクチン接種が開始されました。 本県では、継続的に家畜防疫員、知事認定獣医師および登録飼養衛生管理者によりワクチン接種を行っています。

〈防疫演習の様子〉
〈消石灰による予防〉
〈豚熱ワクチン接種〉
県畜産局
家畜防疫対策課

片山 貴志 主幹

私は口蹄疫発生当時、宮崎家畜保健衛生所の職員でした。パンデミックが起こり、一刻も早く感染拡大を食い止めなければという使命感で現場にいましたが、殺処分直前の牛たちの鳴き声は今も耳から離れません。

忘れてはならないのは、宮崎の畜産はたくさんの犠牲の上に成り立っているということ。あの悲劇を繰り返してはいけない。同じ思いを誰にもさせてはいけない。我々は、不穏な事態に対して、あらゆる可能性を否定せず、常に「かもしれない」と想定して行動する必要があります。

宮崎県の防疫対策は、他県より先進的です。県民の皆さんにも理解を深めていただき、他県の手本になるくらい前向きに防疫に取り組んでいただきたいと思います。

防疫対策について

1 農場では、以下のような防疫対策を行っています。

  • 消石灰などの散布による農場の消毒
  • ねずみなどの駆除対策の強化
  • 野生動物の侵入防護柵の設置
  • 家畜へのワクチン接種(豚熱)
  • 家畜防疫員による飼養衛生管理基準の順守徹底のための農場巡回および指導

2 広げないために、わたしたちにできること

  • 海外から畜産物(肉・卵製品)を持ち込まない
    家畜伝染病予防法により畜産物の持ち込みは原則禁止されています。
  • 空港などでの靴底消毒
    空港やカーフェリーなど、多くの人が立ち寄る施設には、県内への病原体侵入を防ぐために消毒マットを設置しています。日頃から、消毒マットを避けず、しっかり踏んで靴底を消毒しましょう。
  • 畜産農場には立ち入らない、近づかない
    靴底や車両のタイヤに付着した土などにより、意図せず病原体を運んでいる可能性があります。不用意に近づかないようにしましょう。
  • キャンプ場などでの食べ残しを持ち帰る
    海外から持ち込まれた肉製品の食べ残しが野生動物への感染源となることがあります。食べ残しや包装容器などのごみは必ず持ち帰りましょう。

失われた多くの命に
報いることが私たちの務めです。
みんなで一つになって防疫に
取り組みましょう!

お問い合わせ

家畜防疫対策課

0985(26)7139

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