
宮崎県感染症発生動向調査2016年第30号
第18巻30号[宮崎県第30週(7/25〜7/31)全国第29週(7/18〜7/24)]
宮崎県感染症週報
宮崎県感染症情報センター
宮崎県健康増進課
宮崎県衛生環境研究所
宮崎県第30週の発生動向
トピックス
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)(全数報告の感染症)の報告が宮崎市保健所から1例あった。県内での報告は今年6例目で、累計33例(平成25年3月届出開始以降)となった。患者は60歳代男性で、発症は7月下旬であった。ダニの刺し口があり、海外渡航歴はなかった。

全数報告の感染症(30週までに新たに届出のあったもの)
- 1類感染症:報告なし。
- 2類感染症:結核5例。
- 3類感染症:腸管出血性大腸菌感染症1例。
- 4類感染症:重症熱性血小板減少症候群1例。
- 5類感染症:ウイルス性肝炎 1例、後天性免疫不全症候群1例。

全数把握対象疾患累積報告数(2016年第1週〜30週)

( )内は今週届出分、再掲
定点把握の対象となる5類感染症
定点医療機関からの報告総数は681人(定点当たり21.8)で、前週比104%とほぼ横ばいであった。前週に比べ増加した主な疾患はRSウイルス感染症と流行性耳下腺炎で、減少した主な疾患は水痘と伝染性紅斑であった。
インフルエンザ・小児科定点からの報告
【ヘルパンギーナ】
報告数は160人(4.4)で、前週比103%とほぼ横ばいであった。例年同時期の定点当たり平均値*(5.3)の約0.8倍であった。日南(15.0)、都城(7.7)、高千穂(5.0)保健所からの報告が多く、年齢別では1〜2歳が全体の約7割を占めた。
【流行性耳下腺炎】
報告数は105人(2.9)で、前週比121%と増加した。例年同時期の定点当たり平均値*(0.78)の約3.7倍であった。日向(11.3)、延岡(6.8)、小林(5.0)保健所からの報告が多く、年齢別では4〜5歳が全体の約4割を占めた。

*過去5年間の当該週、前週、後週(計15週)の平均値
基幹定点からの報告
○マイコプラズマ肺炎:宮崎市(8例)、高鍋(5例)、延岡、日向(各1例)保健所から報告があった。0〜4歳が3例、5〜9歳が7例、10歳代が5例であった。
保健所別 流行警報・注意報レベル基準値超過疾患
病原体検出情報(衛生環境研究所微生物部 平成28年8月1日までに検出)
細菌

2名の患者から腸管病原性大腸菌(EPEC)が分離された。EPECの判定基準はeae(インチミン遺伝子)陽性の大腸菌で、ST/LT/VTを持たない大腸菌とされている。今年度は、7名からEPECが検出されているが、そのいずれもがOUT(UTはuntypableの略)で市販の抗血清では血清型別出来なかった。血清型別を確定することは疫学的にも重要なため、今後はPCR法によるOg型(O-genotype)の型別も含め検討していく必要がある。
ウイルス

○発熱を呈する高齢者8名、細気管支炎と診断された乳児1名から、RSウイルスが検出された。RSウイルスはすべての年齢層で上気道炎や下気道炎を引き起こす代表的な呼吸器ウイルスであり、乳幼児だけでなく、慢性呼吸器・心疾患を合併する高齢者でも下気道感染を引き起こし、重症化の原因となる。近年、高齢者施設などでの集団発生の原因にRSウイルス感染の関与が指摘されており、高齢者でのRSウイルス感染症はインフルエンザと同様の高い致命率をもたらすことが示唆されているため、高齢者におけるRSウイルス感染にも注意が必要となる。
○上気道炎と診断された幼児1名、下気道炎と診断された幼児1名からパラインフルエンザウイルス1型が検出された。また、気管支炎と診断された幼児2名からパラインフルエンザウイルス3型が検出された。パラインフルエンザウイルスは小児における肺炎、細気管支炎などの下気道炎の起因となるウイルスとしては、RSウイルスについで多くなっている。免疫機能が確立されていない乳幼児が感染し重症化すると、細気管支炎、肺炎などを起こすことがあるため、乳幼児と接触する可能性がある場合は手洗い等をしっかりと行うなど予防対策が必要である。
全国2016年第29週の発生動向
全数報告の感染症(全国第29週)
定点把握の対象となる5類感染症
定点医療機関当たりの患者報告総数は前週比84%と減少した。前週と比較して増加した主な疾患はなかった。減少した主な疾患はA群溶血性レンサ球菌咽頭炎と感染性胃腸炎であった。
流行性耳下腺炎の報告数は3,840人(1.2)で前週比96%とほぼ横ばいであった。例年同時期の定点当たり平均値*(0.54)の約2.3倍であった。新潟県(3.2)、佐賀県(2.5)、宮崎県(2.4)からの報告が多く、年齢別では4〜6歳が全体の約半数を占めた。
* 過去5年間の当該週、前週、後週(計15週)の平均値
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