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トピック

オビスギをノートの表紙素材として製品化する 技術の開発支援
 (木材加工部 主任研究員 松元 明弘)
 宮崎県はスギの素材生産量日本一を誇るスギの産地です。
 スケッチブックやノート等を製造している宮崎マルマン株式会社(日南市北郷町)は、地域特産の飫肥杉をノートの表紙などに使うための製品開発に取り組みました。木材利用技術センターは、同社からの技術相談を受け、平成24年4月から約3カ月間、その製品開発のための技術支援を行いました。
 センターが取り組んでいる技術相談・支援についてご理解をいただくため、ご紹介いたします。
 ノートとメモ帳の写真 
 オビスギを使ったノート(上)とメモ帳(下)
製造元: 宮崎マルマン株式会社(日南市北郷町)
 規格 : ノート(表紙にオビスギを使用、縦15cm、横21cm)
メモ帳(底板部分にオビスギを使用、縦12cm、横8.6cm)  

 センターでは、表紙に用いるスギの加工方法や強度について、次のような試作品を作り様々な検討を行いました。その結果、品質の安定性及び製造方法の簡便性等から、ノートやメモ帳の表紙基材として用いられている厚紙の表面に「突き板」と呼ばれるスギのスライス単板(厚さ0.2mm)を貼り合わせるというかたちで製品が完成しました。この商品は、当初、宮崎県内限定販売商品としてスタートしましたが、現在までに福岡(九州国立博物館)や熊本(熊本市現代美術館)のミュージアムショップでも販売されています。
  

製品開発までの技術支援の内容

 試作1:スギ突き板(厚さ0.2mm)を3〜5層に積層
  スギ突き板を3〜5枚貼り合わせ、ホットプレスで圧密しました。試作品は厚さが0.4〜0.5mm程度と薄く、ある程度圧縮されていたこともあり、プラスティックの下敷きのようなしなやかな質感で、表紙の素材としては良い仕上がりでした。ただし、製造工程数が多くなることと、積層する際に各層の木目を直交させて貼り合わせたために内層の木目が表面の木目に交差する形で浮き出てしまい、外観にやや難がありました。ちなみに木目を各層とも同じ向きに揃えて積層したものは、積層板全体が木目に平行に大きく波打ち、平滑性に問題がありました。
スギ突き板の写真 矢印  突き板を貼り合わせる画像 矢印 試作品1の写真
スギ突き板(厚さ0.2mm)    3〜5枚を木目が直交するように貼り合わせる   試作品1
 試作2:スギ薄板(厚さ1.5mm)を圧密
 ホットプレスによりスギ薄板を圧密しました。試作品は厚さが0.7mm程度と元の厚さのおよそ2分の1に圧縮されていたため、密度が高くなった分、剛性が上がるとともに、表面の触感が滑らかに仕上がりました。また、加熱により木目が濃く褐色化し、圧密前に比べて年輪の模様がくっきり浮き出て、デザイン性のある仕上がりになったのですが、波打つような湾曲が抑えられず実用には至りませんでした。
スギ薄板の写真 矢印 プレス機の写真 矢印 試作品2の写真
スギ薄板(厚さ1.5mm)   ホットプレスで圧縮   試作品2
 試作3:厚紙の表面にスギ突き板(厚さ0.2mm)を張り合わせる
 ノートやメモ帳の表紙基材として用いられている厚紙の表面にスギの突き板を張りました。試作品は厚紙自体が持っている平滑さとしなやかな質感を保持したまま、表面はスギ材の木目や触感を楽しめる良い仕上がりになりました。また、製造過程においても特殊な機器を必要とせず、既存の設備を用いて製造が可能であったことから、この手法により製品製造が行われることとなりました。
スギ突き板の写真 足す 厚紙の写真 矢印 試作品3の写真
スギ突き板(厚さ0.2mm)   厚紙   試作品3

「突き板」(つき板)とは

 木目の美しい天然木を薄くスライスした単板のことで、合板や集成材等の基材の表面に張って、主に、家具や内装材および建具等の化粧板として用いられています。突き板の厚みは0.2〜0.6mmのものが多く、その製造方法は「フリッチ」と呼ばれる木材をブロック状に製材したものをスライサーでスライスする方法と丸太状の木材を大根の桂剥きのように回転させながら薄く削りだしていく方法があります。また、天然木ではなく、薄い樹脂シートに木目をプリントした「突き板シート」というものもあります。
天然木の突き板の写真
天然木の突き板
突き板シートの写真
突き板シート
(集成材ボードの表面にシールを貼ったような感じでほとんど厚みがありません)