宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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沿岸エビのこくの深さと、深海エビの甘さ。
どちらも味わえるのが宮崎の海の魅力だ。

宮崎で獲れるエビは、浅い沿岸に棲むものと水深200メートル以上の深海産に大別できる。前者の代表はイセエビやクルマエビで、こちらは比較的大型になり、殻がしっかりとして、味には深いこくがある傾向だ。後者の代表はガラエビやヒゲナガエビで、小型だが雑味がなく甘みが強い。こちらは、今のところ一般にはなじみが薄いのだが、そのうまさは折り紙つき。沿岸エビと深海エビ、どちらも存分に味わえるのが宮崎の海の魅力といえるだろう。

セミエビ

美味で希少な大型種。その姿は、まさにセミに似る。
ウチワエビと同じセミエビ科のエビだが、こちらはずっと大型になり、まさにセミに似たその姿は、初めて見る人は驚きそうだ。日南海岸一帯のイセエビ漁に混じって獲れるが、その数は少なく、ほとんど流通にのることはない。写真は、飼育中のものを撮影したもので料理はしていないのだが、非常に美味で、殻の内側いっぱいに身がつまり、刺身や塩ゆでにするとおいしいという。

セミエビ

ウチワエビの味噌汁

ウチワエビパッチンエビの名で親しまれる庶民の味。
イセエビに似た風味でおいしい。

宮崎ではパッチンエビやパタエビの名で知られる。上から押しつぶしたような姿をしていて、その狭い殻の隙間につまった身のうまさは、イセエビより上という人もいるほど。ただし、小さいので刺身には不向きで、塩ゆでや味噌汁で食べることが多い。県央部の底びき網で獲れるが、最盛期は短く、4月から5月にかけて。初夏になったら、ウチワエビの味噌汁を思い出してほしい。

ウチワエビの味噌汁

アカザエビのガスパチョ仕立て

水深200メートル以上の深海に棲む日本固有種。
美しい姿と味の良さで高級食材に。

アカザエビは深海に棲むザリガニの仲間で、日本固有種。シンプルに塩ゆでにしてもおいしいのだが、味の良さと形の美しさから、西洋料理の高級食材として珍重されている。今回は、スペイン料理のトマト風味の冷製スープに仕立ててみた。県内では、北浦・鯛名・青島の海域の深海底びき網で捕獲されるが、あまり量は多くないようだ。写真のものは近縁種のサガミアカザエビと思われる。

アカザエビのガスパチョ仕立て

ジンケンエビのかき揚げ

ジンケンエビ深海産の小型エビで殻が柔らかく、丸ごとおいしく食べられる。
同じ深海底びき網で獲れるヒゲナガエビなどより、一回り小型のため、かき揚げや唐揚げにすることが多いのだが、殻が柔らかいので、丸ごとおいしく食べることができる。名前の由来は、人絹(レーヨン)から。かつて絹の代用品に使われた人絹のように、このエビが高級エビの代用に使われたことがあるらしい。一般には無名のエビだが、それほどおいしいということだろう。

ジンケンエビのかき揚げ

イセエビのお造りとずし

ずしきれいな白身につまった繊細な甘み。
季節の味覚、イセエビを豪快に料理。

9月1日に漁が解禁されたイセエビ。県下全域の磯場に棲み、安定した漁があるので、宮崎県民にはなじみ深い。どんな料理にも向くが、その繊細な甘みを味わうなら、やはりお造り。残った頭でだしをとる味噌汁も楽しみだ。日南市富土周辺には、「ずし」という漁師料理も伝わる。イセエビや建網で獲れる瀬魚を使った炊き込みご飯で、寄り合いや祝いの席には欠かせない伝統の味だ。

イセエビのお造り

ヒゲナガエビの握り寿司

ヒゲナガエビ深海底びき網でとれる通称・甘エビ。
雑味のない甘さは一級品だ。

青島周辺で「甘エビ」と呼ばれる深海のエビで、いわゆるアマエビ(ホッコクアカエビ)よりも大きくなる。味は新鮮な分、こちらに軍配が上がるか。型が大きいので、握り寿司にしても一匹で十分な大きさになる。青島漁協の直売所では、これを急速冷凍したものを一箱千円で販売している。解凍後、皮をむいてわさび醤油で食べるのがおすすすめだが、そのうまさを思うと、信じられない安さではないだろうか。

ヒゲナガエビの握り寿司

ガラエビの塩ゆで

ガラエビ県北部を代表する深海エビ。
祭りの料理に欠かせない地方も。

和名はミノエビ。その名の通り、ごつごつした姿でいかめしいが、深海に棲むせいか案外、殻は柔らかくむきやすい。土々呂一帯では、祭りや祝いの席で、このエビを山盛りに供することが習いになっているという。また、延岡の漁師さんからは、塩焼きにするとこんなにうまいものはないと聞いた。取材時、生と塩ゆでを食べ比べてみたが、特に生食が印象深い。その味の濃さと深さは一段抜けているようだ。

ガラエビの塩ゆで