東 美香・河野 喜美子・平崎 勝之
Study on the Food Poisoning Outbreak and Sporadic Diarrhea by Salmonella Enteritidis
in 2002-2003
Mika HIGASHI, Kimiko KAWANO and Masayuki HIRASAKI
Abstract
A total of 45 Salmonella Enteritidis strains isolated from food poisoning
outbreaks and sporadic patients in Miyazaki from 2002 to 2003, were analysed
by using pulsed-field gel electrophoresis (PFGE) and bacteriophage typing. PFGE
analyses identified 5 PFGE patterns with 5 groups of food poisoning outbreaks.
PT-1 and PT-47 was only detected in group 4. The other groups tended to have
their own specific bacteriophage typing. We believe it is more useful to combine
all of the phage types and PFGE types in this study.
Key words : S. Enteritidis, PFGE, bacteriophage typing, food poisoning
outbreak, sporadic diarrhea
はじめに
厚生労働省食中毒統計によると、細菌性食中毒の患者総数は、2001年15,753人、2002年17,553人、2003年29,341人と推移してい る。このなかでサルモネラによる患者数の占める割合は、2001年31%、2002年33%、2003年39%であり、病因菌別では第1位を占めている。
全国の地方衛生研究所・保健所から国立感染症研究所情報センター(IDSC)に報告されたサルモネラ検出数は2000年から年間2000〜3000で推移しており、血清型ではSalmonella
enterica subsp. enterica serovar Enteritidis(S. Enteritidis)が1989年以降第1位を占める状態が続いている。その割合は2001年53%、2002年62%、2003年63%と推移しており、各年とも第2位と比較し約10倍である。
宮崎県においても、患者由来ではS.
Enteritidisの割合が2001年53%、2002年56%、2003年68%と推移している。2003年には細菌性の食中毒事例が8事例発生しており、そのうち5事例がサルモネラによる事例であった。サルモネラを原因とする集団食中毒及び散発事例においてS.
Enteritidisは重要な病因菌であり、また、これらの事例間での関連性を調べるためには感染源調査が必須となる。
そこで、2002〜2003年に宮崎県内で発生した集団食中毒、及び散発事例から分離されたS.
Enteritidisについて、パルスフィールド電気泳動法(PFGE)による遺伝子多型解析及びファージ型別試験(国立感染症研究所へ依頼)を実施し分離菌株間の異同を調べ、これらの事例の感染源について検討した。また、PFGE及びファージ型別試験の疫学マーカーとしての有用性についても考察したので報告する。