宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
海幸・山幸。うまいもの

イガ栗は実りの季節。何と言っても一年中で、一番食べ物がおいしい季節だ。宮崎でもお米やサツマイモをはじめ、里芋、椎茸、ゆず、なす、そばなど、数多くの旬の素材が、食卓をにぎわせてくれる。海でも9月から漁が始まるイセエビをはじめ、アジ、イワシ、ハモ、カツオ、フグと、こちらも豊穣の秋を迎え、まさに海幸・山幸があふれる季節だ。

今回は、特集が「港町うまいもの紀行」と、魚づくしであることもあって、このコーナーでは野山の素材を使った料理をご紹介した。里芋、椎茸、栗、千切大根と、素材そのものは店頭で普通に手に入るものばかりで、調理も決して凝ったものではないのだが、宮崎の風土に根ざした、ひとつひとつをじっくり噛みしめたくなる料理になった。旬の真っただ中で、季節の恵みをそのままに味わうことが、最高のごちそうであるのかもしれない。宮崎では、ほかにもムカゴ、あけび、山芋など、野山の恵みが数多い。こうした季節の食材を探しに秋の宮崎の野山を歩いてみるのも楽しいだろう。

焼きしいたけ

山の滋味をたっぷりと含んだ名産の椎茸。
軽く焼いて、湯気の出ているところに平兵衛酢を添えて。

焼きしいたけ

宮崎県は大分県と並ぶ椎茸の名産地だ。最近は安い中国ものも出回っているが、香り、味わいとも最上を求めると、やはり国内産に限る。炭火で焼いて、特産の平兵衛酢のぽん酢を添えると、平兵衛酢のさわやかな酸味が椎茸の甘みと香りを引き立ててくれる。秋の夜にうれしい贅沢だ。

鮎の塩焼き

天然ものが最高だが、最近は養殖もおいしい。
みずみずしい川の香りを味わう。

鮎の塩焼き

五ヶ瀬川、綾北川など県内には鮎の名川が多い。最高においしいのは、こうした川でとれた天然ものだが、最近は技術が進んで養殖ものにもおいしいものが多くなった。真夏の鮎は、スイカに似た香りがみずみずしいが、卵をもった秋の落ち鮎もまた格別の味わいがある。炭火でじっくりと焼き上げて、川の恵みを楽しもう。

ぬたいも

さといもを甘いみそで仕立てるぬたいもは、宮崎の懐かしい郷土料理。いつまでも受け継いでいきたい。

ぬたいも

特に県央部から県南部にかけては、当たり前のように食べてきたお総菜だが、あらためて食べてみると、はっとする懐かしさ。ぬたいもは、蒸した里芋をみそ、砂糖、ゴマとともにすりばちですり、形のしっかりした里芋と和える料理だ。いつまでも受け継いでいきたいふるさとの味。

栗おこわ

初物の栗を家族でありがたくいただく。
ご飯に酒と塩で下味をつけるのがポイント。

ぬたいも

炊き込みご飯でももちろんおいしいのだが、ちょっと凝って餅米を使ったおこわもうれしいもの。酒と塩で下味をつけたご飯が、素材の味を引き立て、素朴なごちそうになる。

特に県央部から県南部にかけては、当たり前のように食べてきたお総菜だが、あらためて食べてみると、はっとする懐かしさ。ぬたいもは、蒸した里芋をみそ、砂糖、ゴマとともにすりばちですり、形のしっかりした里芋と和える料理だ。いつまでも受け継いでいきたいふるさとの味。

千切り大根のまだか漬け

「まだか、まだか」が名前の由来。
千切り大根に昆布、するめを合わせる松前漬け風味。

ぬたいも

霧島おろしの寒風にさらして作る宮崎特産の干し大根を、松前漬け風味に仕上げたのが千切り大根のまだか漬け。千切り大根に昆布、するめ、ニンジン、大豆を合わせて、甘酸っぱく味付けをする。即席漬けだが、あまりにうまくてそれを待てない人もいる。「まだか、まだか」が名の由来とか。

取材協力/中島貞子さん(料理研究家)
日本女子大卒。栄養士。MRTラジオ「貞子先生のまるごとゴチソウサマ!」出演中。その他テレビ、ラジオ出演多数。宮崎社会保険センター講師。イリス料理教室講師。