宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
港にうまいものあり

 

夜の操業

港にうまいものあり。

黒潮の恵みを受け、季節ごとにさまざまな魚を届けてくれる宮崎の海。各地の港には、土地柄に応じた漁の姿があり、古くから愛されてきた食材や料理がある。そんな地元ならではの「うまいもの」を探して、県内の港町を訪ねてみた。

ウルメイワシ天日干し海のもの、山のものを問わず、すべての食材には産地がある。たいていはそこから市場を経て、さまざまな流通に乗ってわれわれの近所にある店頭に並ぶわけだが、その事情はなかなか複雑で、隣町の港で獲れた魚が、すべて買えるわけではない。たとえばトラフグや一部のマアジなどのように高値がつくものは、地元の鮮魚店よりも先に大都市圏へ行ってしまう。逆に、食べるとおいしいのだけれど、量が獲れないとか、市場で値がつかないために漁港周辺の人だけが食べているという魚もある。今は高級魚の仲間入りをしたが、かつてのメヒカリがそうだった。地元の漁師さんたちだけが知る魚、あまり知られていないが地元では有名な料理もあるかもしれない。今回の特集は、こうした地元ならではの「うまいもの」を探して、県内の代表的な港町を歩いてみた。

豊かな漁場と歴史に育まれた宮崎県の漁業

マグロの品定め南北に400キロにもおよぶ太平洋に面する宮崎県の漁業は、土地ごとにさまざまな顔をもっている。豊後水道の入り口にあたる北浦や島浦は、そのリアス式の地形もあって、魚が多く、昔からアジやサバ、イワシなどの巻き網漁が盛んだ。県央部の海岸線は、陸から見ると砂浜が続き単調だが、その沖にはさまざまな魚が着く瀬が点在しており、アジやチリメンに加工されるカタクチイワシの良い漁場になっている。

また黒潮の流れに近い日南・串間周辺は、カツオ、マグロ、シイラ、トビウオなどの回遊魚が多い。中でもトビウオ漁の歴史は古く、平安時代に編まれた延喜式(927年)にも、串間産のトビウオの干物が登場するほどである。

漁師さん県全体の水揚げ高でいうと、ウルメイワシとシイラは日本一。他に、ムロアジ類、キハダマグロ、マカジキ、ビンナガ、トビウオ、カツオといったところが、全国6位以内にランクインする。カツオ、マグロ類は遠洋漁が中心だが、沿岸・近海の漁も盛んなのが宮崎県の特徴で、近海カツオの一本釣り、沿岸マグロはえ縄漁は日本一の水揚げを誇る。宮崎の海が、いかに豊かであるかの証しといえるだろう。

生産や流通技術の向上で、「食」から旬が失われつつあるといわれて久しいが、その時、その海にいる魚を獲ってくる漁業は、海や季節の状況が水揚げにそのまま反映される。このくらいストレートに自然に左右される産業は珍しいだろう。海の恵みは、暮らしに季節のうるおいをもたらしてくれている。