宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
ミニトマト栽培

海の幸がにぎやかな漁師町の膳

北浦町

アジやイワシなどを獲る巻き網漁で知られた北浦町は、リアス式海岸に守られた入り江に港が点在する漁業の町だ。若者は巻き網船団に乗り組み、定年になってからは夫婦で小さな船を買って、伊勢えびなどを獲る建て網漁を始める人も多い。多くの家が親子代々で漁業に携わっていることもあって、祭りや正月の行事にも漁師町らしい風習が受け継がれている。

大晦日の夜は、建て網でとれる磯魚をぶつ切りにして白菜、人参、こんにゃくなどを入れた汁を作る。それに名物の魚寿司と刺身で年の暮れを迎える。正月は尾頭つきのタイと伊勢えび、数の子は必ずつけたものだそうだ。魚寿司は日持ちがするため、大晦日の晩にまとめて作っておく。正月二日には「乗り初め」といって、港に停めた船に大漁旗を立てて、みかんやお菓子を船から撒く。

北浦町のおせち

伊勢海老、タイの塩焼き、セイイチ(フエフキダイ)の煮付け、数の子、シラスのごまめ、なます、煮しめ、雑煮、魚寿司、卵焼き。

料理を作っていただいた木原和子さんによると、「町内に田んぼができたのは昭和35年頃。それ以前は麦ご飯が普通で、正月や祭りの白米、お餅はうれしいものでした。男は10個くらいもお餅を食べたものでしたよ」とのこと。刺身の定番はキツイオ(メジナ)の焼き切り。三枚におろしたメジナを軽くやいて刺身にし、酢味噌で食べる。魚寿司や煮しめとともに、正月や9月の天神祭り、11月の氏神祭りにはつきものだった。

    

取材協力:木原和子さん(北浦特産品加工グループ)