宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
ザインタビュー「大萩康司さん」

profile
大萩康司(おおはぎ・やすじ)さん

1978年、宮崎県小林市生まれ。9歳よりギターを始め、高校卒業後、パリのエコール・ノルマルに入学。翌年、パリ国立高等音楽院に首席で入学。1998年、「ハバナ国際ギターコンクール」で2位受賞。同時に「レオ・ブローウェル作品最優秀演奏賞」を受賞。2000年9月『11月のある日』でCDデビューし、現在までにCD、DVDあわせて8作品をリリース。その大胆で創造的な演奏は国際的にも高く評価されている。

アウトドア少年として過ごした小林時代。
ホタルや美しい星空に囲まれて育ちました。

1998年、弱冠20歳で世界最高峰のコンクールである「ハバナ国際ギターコンクール」で2位を受賞し、鮮烈なデビューを飾ったクラシックギタリスト、大萩康司さん。古典から現代曲、キューバ音楽と幅広い音楽活動で内外の注目を集めている大萩さんに、ギター音楽やふるさと宮崎のお話をうかがいました。

日本中、世界中を飛び回ってご活躍されていらっしゃいますね。

大萩:昨年、1月と5月はキューバにいました。ちょうど日本とキューバの友好年ということで日本から僕が参加させていただき、5月にはキューバ国立交響楽団とアランフェス協奏曲を演奏しました。6月はベルリン、パリ、ベルギー、スイス。スイスでは講師として教える仕事でしたが、7月には生徒として1か月間イタリアのキジアーナ音楽院で学びまして、11月はイタリアのベネチア合奏団とビバルディのコンチェルトをやって…、という具合です。その間、CDを3枚、DVDを1枚出させていただきました。

これまでリリースされたCD、DVD8作品のうち、5つがキューバ音楽に関わるものになっています。クラシックギタリストとしてはユニークな選曲かと思いますが。

大萩:実は98年にコンクールでキューバを訪れる前は、あまりキューバ音楽の知識はなかったんです。帰国してから『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』というキューバのミュージシャンが登場する映画を観て、「これはすごい」と思ったくらいで。キューバを好きになったのは、人なつっこい人が多くて、こちらもとても正直になれる場所だったこと。それから、レオ・ブローウェルという大変重要な作曲家がおられまして、『ハバナ国際ギターコンクール』も彼が審査委員長なんですね。このブローウェルや、レイ・ゲーラといった音楽家に出会えたことが、キューバ音楽にひかれたきっかけになっています。

世界デビューの舞台となったハバナのコンクールでは、世界的なギタリスト、ジョン・ウイリアムスにも会われたとか。

大萩:いえ、たまたまホテルが一緒でエレベーターに乗り合わせただけです(笑)。何か話しかけようと思ったのですけど、いざとなるともう胸がいっぱいになって何も話せなくて。「自分はすごい世界にきちゃったんだな」と、その時に初めて思いました。

それぞれの曲に、自分の中で理想の演奏があります。

ギタリストとしてデビューされるまでのお話をお聞きしたいと思います。ギターは9歳から始められたとか。

大萩:母が地元の小林でギターアンサンブルに参加していまして、家にあったギターをさわったのが最初でした。始めは母と同じくアンサンブルをやっていたのですが、「二つのパートを一人で弾いたら面白いかも」と自分で工夫してやっていたら、当時教えていただいていた萩原博先生が、「そういうのはソロというんだよ。ソロ用の楽譜があるからやってみるかい」と。その萩原先生に紹介されて、中学1年生頃から福岡のフォレストヒルというスクールに、バスに乗って月1回ほど通うようになりました。このスクールには5年間お世話になったのですが、ここで中野義久先生や福田進一先生に自分の基礎を作っていただきました。

小林高校を卒業後、フランスに留学して、翌年、パリ国立高等音楽院に首席で入学。大きな転機でしたね。

大萩:自分では留学とかプロになるとか想像もしていなかったのですけど、高校2年の頃、福田先生に「これからどうするの」と聞かれた時に、一緒にいた友達が「留学します」というので、僕もつられるようにして留学しますと。思えばあの一言が転機だったような気がします。

小林で過ごされた子供時代のことをお聞かせください。

大萩:小林時代はアウトドア少年でしたね。学校の帰り道に同じ道を通るのがいやで、あちこち寄り道してはトカゲやカエルをつかまえたり。それから、むかごやあけびをとったり、畑のイチゴをちょっといただいたり(笑)。実家は五右衛門風呂だったので、お風呂を沸かしながらむかごをあぶって食べてみたり。そんなことばかりしていました。よく親戚が集まって食事会をした出の山の鯉料理も懐かしいですね。小林といえば、空気と水と星、そしてホタルの美しさ。それ以外に何もなくてもかまわないというくらい。東京から帰省してくると、ふるさとの美しさやゆったりとした人のペースがとてもありがたく感じます。

最後に、これからの目標を。

大萩:それぞれの曲に、僕の中で理想の演奏があって、ひとつの曲をすみずみまで味わいつくせるようになりたい。そのためにギターがうまくなりたいと思っています。それから、今、デュオ(二重奏)をやりたいですね。最近、福田進一先生やジャズの渡辺香津美さんとやらせていただいたのですが、ソロにない面白さに気づきました。将来はレイ・ゲーラや村治佳織さんとデュオができたらな、と思っています。

本日はありがとうございました。ますますのご活躍を楽しみにしております。

2月16日/福岡市のフォレストヒルにて

大萩康司さん

大萩康司オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/ohagi/index.html