宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
スズメバチ捕り

ハチ捕りは山の男の楽しみ。
スズメバチを追って森を駆ける。

宮崎の山間部には「ハチ捕りが趣味」という人が多い。危険をくぐり抜けて捕ってくるハチの子や、自然の山野からミツバチが集めてくる蜂蜜はとっておきのご馳走であり、ハチを漬け込んだ焼酎は、家庭薬として重宝されるということもあるのだが、ミツバチを飼い、スズメバチを捕ること自体が、山の男の楽しみとして熱く語られる。都城市高崎町に住む大重重隆さんも、そんなハチに魅せられた一人だ。

ハチ捕りを語る大重さん

キスズメバチの巣を手にハチ捕りを語る大重さん。この巣は小さい方だということ。

「若い頃から楽しみでミツバチを飼っていたのですが、そのミツバチを食べにスズメバチが飛んでくるようになったのですな。よし、それでは今度はスズメバチを捕ってやろうと、先輩に教えてもらいながらハチ捕りを始めました」

大重さんが狙うのは、日本のハチの中でもっとも危険で大型になるオオスズメバチとキスズメバチだ。クヌギやニレの木に蜂蜜を塗っておくと、やがてハチがやってくる。そこへトンボやイナゴなどを竿の先に串刺しにして与えてやると、飛びついて食べ始めるので、竿を手元に引き寄せて、ハチの胴に目印となるビニールのひもをくくりつける。

林をゆく大重さん

網つきのヘルメットとハチ捕り道具を入れたバッグを手に林をゆく。ハチの巣に近づく時は、雨合羽を着る

「ハチは虫を食べている時は夢中ですから、動きません。うまく目印をつけたら、飛んでいくのを追いかけて巣のありかを突き止めるわけです。巣の入り口に鉄で編んだ籠をかぶせると、怒って飛び出してきたハチが、どんどんその中へ入ってきます。一度に数百匹捕れることもありますよ」

ハチの子は炒め物にして晩酌の肴に、成虫は焼酎に漬けてハチ焼酎にする。その効能をたずねると、「滋養強壮など、何にでも効きますわ」と笑った。

ハチ焼酎とハチの子の炒め物

写真左)巣ひとつ分、300匹ものスズメバチが入った特製のハチ焼酎。飲み頃は三年経った頃から。香ばしい風味があり飲みやすいが、一日に杯(さかずき)一杯分が適量とのこと。
写真右) ハチの子の炒め物はおかずにも肴にも向く。ハチの子は塩漬けにして保存する人も。

※スズメバチ捕りは高い技術と経験が必要で、危険がともないますので、一般の方が遊びで行うのはおやめください。