宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

カヤ・シュロ細工

夢に出てきたという親子バッタ。見事な細工だが、あっという間に作ってしまう。

一枚の葉から四匹のバッタ。
草遊びがつなぐ人の交流。

竹元さんがシュロの葉を手にとり、にこやかに話をしながら手を動かすと、2分もたたないうちに精緻をきわめるバッタが生まれている。猫も本物と思って飛びかかってくるというが、その手際の鮮やかさにはため息をつくしかない。

「むずかしそうに見えますが、やれば簡単なことなんですよ。子供でもちょっと教えれば、できるようになります」

草の葉を使って、さまざまな細工を作るのは、かつて子供たちの野遊びとして伝わっていたが、遊び場としての原っぱが消えたのと同時に、いつか途絶えてしまった。この草のバッタも、消えかかっていたものだろうが、ある日、竹元さんの妹さんが、友人の作るのを見て、自分でも作れるようになったことが、「復活」のきっかけになった。

竹元さん

「売るわけではないので、秘密の技というものもありません。草の葉っぱでこんなものが作れるという喜びを伝えたい」と語る。

「ひとつ作って、近所の子供たちに見せてあげたら『おじちゃん、すごい』とおだてられまして(笑)。もともとはカヤ細工なのですが、シュロを使うようになったのが、私の工夫といえば工夫ですね。シュロは通年使えますし、細工もしやすいのです」

シュロを使うことで作れるようになった四連バッタは、竹元さんのオリジナル。カヤに比べて扱いやすいため、小学校や敬老会に出かけていって講習会を開くなど、草遊びの伝承に積極的に取り組んでいる。

四連バッタ

一枚の葉から4匹のバッタを作る四連バッタは、竹中さんのオリジナル。水に漬けておけば2週間ほどは鮮やかな緑を保つ。

「先日は西ドイツのフランクフルトまで、作り方のビデオを送りました。バッタをほしいという人も多いのですが、私は作り方を教えた方が楽しいので。初めてバッタを見た時の感動、初めて作った時の喜びを、多くの人に味わってほしいですね」