宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
メイプルシロップ作り

霧立の森に自生するカエデから
森の香りのメープルシロップを作る

上椎葉ダムのほとりに位置する椎葉村松木地区で民宿を営む椎葉英生さんは、山に自生するイタヤカエデの樹液を使うメープルシロップ作りに取り組んでいる。椎葉の動植物に詳しく、森林インストラクターとしても活躍する椎葉さんだが、シロップ作りはまったくの手探りから始め、今年、初めての試作にたどりついた。

「樹液は冬から春先にかけて、カエデが水を含んだ頃に幹に穴を開けてとるのですが、新月の日がよいということがわかってきました。収量は1本の木から平均5リットルほどで、それを四十分の一に煮詰めますので、メープルシロップになるのは1本の木から約120mlといったところです」

写真左)椎葉英生さん
写真右) 松木地区から霧立峠へ向かう山道。人や物資の流通に、かつて主要道と呼べるほど大切な役割を果たしてきたこの道に沿って、多くのカエデが自生する。

現在、90本のイタヤカエデに番号をつけて管理しているということで、山に連れていっていただいた。トラックで林道をしばらく行き、あとは徒歩になるのだが、その森の小道はかつての霧立越の尾根道に続く支道にあたり、落ち葉がふかふかと敷きつめられた、最近ではなかなか味わえないような歩き心地の道だった。山を歩きながら、椎葉さんが語る。

「いずれは1ヘクタールほどをメイプルの森に育てたいと考えています。カエデだけではだめで、日陰を作ってやらなくてはなりませんので、ツバキなどの常緑樹を一緒に植えることになるでしょうね」

カエデの樹液はさらさらとしており、そのままでもかすかに甘い味がするのだが、これを煮詰めてシロップにすると、とたんに独特の風味が出てくる。それは秋から冬にかけて、落ち葉の森を歩く時に感じるような、森そのものの匂いや気配に通じる風味だ。近い将来、霧立の森から新しい逸品が生まれそうだ。

山菜

このくらいの山菜は、裏山を10分ほども歩けば集めてきてしまう。