宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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みやざき地頭鶏

ルーツは霧島山麓の幻の地鶏。
炭火焼きの香ばしさを味わう、みやざき地頭鶏(じとっこ)。

宮崎を代表する美味として人気を集めている、鶏の炭火焼き。中でも最高峰の味わいを誇るのが、今年3月31日に「みやざきブランド品目」に認定された「みやざき地頭鶏」だ。柔らかで独特の噛みごたえのある肉質と、鶏本来のうまみ、香ばしく軽快な脂は炭火焼きに最適だが、煮物などどんな料理にも向く。

血統が厳重に管理されていることから、ひなの生産数が少なく、宮崎でも、限られたお店でしか食べることができないその味わいは、近年の焼酎ブームとともに大都市圏でも広く知られるようになったが、需要に生産が追いつかない時期が長く続いていた。年々、生産は増えているのだが、それでも年間25万羽程となっている。東国原知事のPRもあって、ますますブームに拍車がかかりそうだ。

恵まれた環境で育てられるみやざき地頭鶏

薩摩では鶏は野菜?

みやざき地頭鶏のルーツになっているのは、霧島山麓一帯で古くから飼われていた在来種の地頭鶏(昭和18年、国の天然記念物指定)だ。その格別のうまさから、地頭職に献上する鶏だったといわれ、いつしか地頭鶏と呼ばれるようになったという。ブロイラーが普及する中で、成長が遅い地頭鶏は肉用飼育には向かないといわれ、愛好家の間で細々と血統が守られていた幻に近い鶏だった。

宮崎県内でも都城市からえびの市にかけての旧薩摩藩領一帯は、地鶏文化圏といえるほど豊かな鶏の食文化がある。客をもてなす際に飼っている鶏をつぶして供する習慣は、最近ではさすがになかなか見られなくなったが、祭りや祝い事の席で鶏のたたきや、鶏とともに煮込んだ煮しめを焼酎とともに味わう文化は、現代にも受け継がれている。

司馬遼太郎の小説「翔ぶが如く」には、西郷隆盛が木戸孝允と鶏肉の入った薩摩汁を食べながら、「薩摩じゃ、鶏は野菜(やせ)ごわす」と語るシーンがある。西郷独特のユーモアにしても、南九州の食文化の中で、鶏の占める位置づけがわかるエピソードだ。

そんな地鶏文化の中で伝えられてきた地頭鶏をベースに、ホワイトプリマスロック種と九州ロード種を交配して、平成2年、宮崎県畜産試験場川南支場で開発された「みやざき地頭鶏」には、地鶏文化圏である南九州の誇りが込められているといえるだろう。

1平方メートル当たり2羽以下、飼育期間が120日から180日という恵まれた環境

雄と雌のバランスが、店ごとの個性に

地鶏の炭火焼きは、肉の表面に炭の粉が付着して、それが独特の味わいになっている。肉から出た脂が炭に落ち、それが煙となって肉をいぶすために、燻製のような風味が出てくるものだ。自宅で炭火焼きをしても、なかなかこの味わいは出ないのだが、その秘密のひとつが雄鶏と雌鶏のバランスにあるという。

雄鶏は歯ごたえがあり、さっぱりとした味が特徴。雌鶏は脂がのって肉質もより柔らかいが、その分、炭火焼きにすると盛大に煙が出ることから炭っぽくなり、色も黒くなる。最終的に、どんな風味や色合いの炭火焼きに仕上げるかという店ごとの個性によって、この雄・雌の配分が変わってくるのだそうだ。

最近は、宮崎県内だけでなく首都圏などでもみやざき地頭鶏を食べられるお店が増えてきた。店ごとに味わいのちがう炭火焼きに、こんな工夫があることを思いながら、食べ比べてみるのも楽しそうだ。

みやざき地頭鶏