宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
海幸・山幸。うまいもの

秋から冬。山の緑が沈んで見える頃になると、温かい食卓が恋しくなる。南国といわれる宮崎でも、山間部では雪が積もり、寒さも厳しいのだが、山に暮らす人たちの貴重なたんぱく源であるとともに、とっておきのご馳走として猪があった。猪鍋は不変の定番だが、土地によっては生の猪肉を味噌漬けにして保存し、正月に来客があると焼いて振る舞うところもある。そばの産地である椎葉村では、そば粉による団子汁ともいえる「わくど汁」が名物。これにも時に、猪肉が入る。

のものでは、高鍋のイワガキ、日向灘のフグ、ヒラメが真冬の味の代表格で、二月の声を聞く頃には耳川、五十鈴川のシロウオ漁が始まる。最近ではあまり食べる機会がないが、冬場においしくなるオイカワの甘露煮が懐かしい人も多いだろう。野菜・果実類も、大根、金柑(きんかん)、いちご、菜の花、早掘りのたけのこと、豊かに揃っている。日暮れが早いせいか、夕食の準備もいつもより手早くなる季節。宮崎の冬の恵みを楽しみながら、温かな団欒(だんらん)を過ごしたい

猪鍋

体を温めてくれる冬の山里のご馳走。
甘みをきかせた味噌仕立てで、野性味を引き立てる。

猪鍋

毎年、11月中旬から猪猟が解禁になり、もっともうまいとされる「鉄砲猪」が出回る。猪は古くから体を温め、精をつけるものとして珍重されてきた。宮崎は九州でも猪猟が特に盛ん。味噌仕立ての「しし鍋」は、山里で客をもてなす最高のご馳走だ。

高鍋のイワガキ

小丸川と日向灘に育てられた天然のイワガキ。
口いっぱいに広がる磯の風味を楽しむ。

高鍋のイワガキ
高鍋のイワガキ
高鍋のイワガキ

小丸川が日向灘に注ぐ河口一帯は天然のイワガキが多く、高鍋のカキとして名物になっている。マガキに比べて小ぶりなものが多いが、風味豊かで、何より栄養分豊富な海と川に育てられた天然もの。なるべくシンプルな料理でぷりぷりとした食感と、口に広がる甘みを楽しみたい

地鶏そば

名産の地鶏でスープをとり、新そばを味わう。
こくのある風味は、宮崎ならではの贅沢(ぜいたく)だ。

地鶏そば
地鶏そば
地鶏そば

初霜が降りる頃、新そばのシーズンとなる。焼畑農法の伝統があった宮崎は、椎葉、日之影などそばの産地に恵まれている。名産の地鶏のスープとかつおぶしの出し汁を合わせて作る地鶏そばは、宮崎ならではの味わいだ

日向かぼちゃの日の出南京

ずっしりと栄養の詰まった日向かぼちゃに、
ひと手間かけたプロの一品。

日向かぼちゃの日の出南京
日向かぼちゃの日の出南京

冬至にかぼちゃを食べると風邪を引かないという言い伝えは、緑黄色野菜の効用を考えるともっともな話。特産の日向かぼちゃを使った日の出南京は、家庭料理というよりも料理人が腕によりをかけたプロの一品。卵の黄身を太陽に見立てた、美しい創作料理だ。

れんこんのきんぴら

おせち料理に欠かせない重要な脇役
最近では健康野菜としても注目。

れんこんのきんぴら
れんこんのきんぴら

れんこんといえば熊本が有名だが、宮崎にも新富町など良いれんこん産地がある。れんこんのきんぴらは、「先が見通せる」としておせち料理には欠かせない縁起ものだ。繊維ばかりのようにみえるが、実はビタミンCや鉄分、カリウム、亜鉛などが多く、健康野菜としても注目されている。

取材協力
魚山亭県庁前店 宮崎市橘通東1-8-11 TEL 0985-24-7070