宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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日南市・油津
千隻の漁船がひしめいた東洋一のマグロ基地・油津

日本一のクロマグロ
昭和61年に獲れた「日本一」といわれるクロマグロは、体長2.88m重さ483kgの大きさ

昭和の始めから太平洋戦争が始まる16年頃にかけて、油津は空前のマグロ景気に湧いた。今では海の宝石とも呼ばれるクロマグロが、目前の海で年間に4000トンから8000トンも獲れ、それを狙って全国から集まってくる漁船も、多い年では600隻近くに達していた。その多くは焼玉エンジンを積んだ10トンから15トンほどの動力船だったが、帆で走る伝統のチョロ船も活躍していた。

同じ頃、カジキの突きん棒漁も豊漁が続き、こちらも数百隻の漁船が油津に集まったことで、港内には1000隻近い船が停泊していたという。釣れたマグロが市場に入りきれず、競りを待って船着き場に野積みされていた時代、町には仲買人の事務所をはじめ、飲食店やカフェ、米屋、八百屋、石油店が立ち並び、繁栄をきわめていた。日南市漁協組合長の蛯原清仁さんによると、油津でマグロといえばクロマグロのことで、それ以外はキハダ、ビンチョウ、メバチなどと呼ぶ。かつて東洋一のマグロ基地といわれた油津の誇りが、こんなところにも現れているのかもしれない。

船着き場で競りを待つクロマグロ 杉村金物本店
市場に入りきらず、船着き場で競りを待つクロマグロ。こんな風景が昭和17年頃まで続いていた。 昭和7年に建てられた杉村金物本店は、今では珍しい木造三階建て。レトロな雰囲気だ。

油津赤れんが館油津では、現在も17隻の近海マグロはえ縄船が漁を営み、毎月第2、第4日曜日の早朝に漁協で開催される朝市は、新鮮な魚を求めて、多くのお客でにぎわっている。堀川運河をはじめ、赤れんが館や堀川資料館、杉村金物本店など、往時の繁栄をしのばせる町並みが残る港町・油津には、海とともに生きてきた人々の暮しが、今も息づいているようだ。

写真左)コンサートなどの会場として利用されている油津赤れんが館。大正時代に建てられた。

油津港

宮崎カツオ、マグロ紀行