令和7年度「知事との本音トーク」分野版(第1回)
内容
開催日時など
開催日時
令和7年7月15日(火曜日)午後2時から午後3時30分まで
場所
県庁本館講堂
テーマ
めざせ「神楽」ユネスコ無形文化遺産登録~未来への保存と継承~
参加者
本県の神楽関係者7人
知事挨拶
- 本日は、御多忙の中、「知事との本音トーク」に参加いただき、感謝申し上げる。私は、県政を進める上で対話と協働を重視しており、この本音トークは、県民の皆様と意見交換を行う場である。
- 今回は、神楽に焦点を当てた分野版の本音トークを開催する。
- 現在、本県が旗振り役となって、全国の都府県及び神楽関係団体と連携をし、日本の宝である神楽を世界の宝とするべくユネスコ無形文化遺産登録を目指して、取組を進めているところである。
- 全国を代表する神楽どころである本県において、実際に地域で神楽を支えていただいている皆様から、様々な意見、実態等を聞かせていただき、今後の活動において力強く前に進む原動力としていきたいと考えている。ぜひ忌憚のない御意見をいただきたい。
ページの先頭へ戻る




ページの先頭へ戻る
御自身の活動を通して考える神楽の継承上の課題について
- ユネスコ無形文化遺産登録を通して、地域の方が神楽を誇りに思うことに繋がり、保存継承に繋がると考える。高千穂町には多くの神楽保存会があり、夜神楽や日中に実施する神楽等、形態は様々である。コロナによって賄いがなくなった地区も多く、以前は村祭りの神事と神事芸能としての神楽をセットとして実施されていたが、コロナ以降は村祭りと神楽を別々に実施するといった地域も出てきている。神楽を取り巻く環境も変化しているため、今後、どのように継承していくのか関係者全体で議論しながら進めていくことが重要と考える。
- 諸塚村の南川神楽は、舞手は5集落で1団体であるが、会場は5集落が持ち回りで実施している。南川神楽は、会場では、屋外に御神屋(みこや)を作って舞い、また賄いとして皆に食事を提供することになるが、継承を考えたときに舞手だけではなく、奏者や会場の準備等の部分も合わせて考えていく必要がある。舞手以外の部分でも高齢化が進んでいる。村外から結婚等で移住してきた人もいるが、準備等についても、伝統的なルールが多く、新たに参画いただく方にとってはハードルが高い部分がある。現在、保存会の中でも伝統を守り集落持ち回りは継承すべきという意見と、会場を1カ所にしてしまうという意見に分かれている。また、ユネスコ無形文化財遺産登録等を危惧している方々もいる。これまでの神楽は村のための神楽であって、来る人も村人であり、来た人には会場で食事やお酒が飲めるという文化でおこなってきていた。しかし、登録により村外からの観光客が来ることになると、これまでとは状況が変わってしまい、飲食の部分、治安上の問題をどうするか課題が多い。
- 都農神楽は、現在は子供の舞手が多くいる。平成23年頃には大人も含め全体で7人の舞手しかいなかったが、どんどん子供を増やしてきた。子供は教えても進学や就職等の生活環境の変化によって地域から離れてしまい、数年で辞めてしまうので諦めていた部分があった。しかし、発想を逆転して学校制度のように中学校を卒業して年長の子が辞めていくのと同じ分、声かけをして毎年4、5人の年少の子供を増やすことで継続していく取り組みを始めた。また、伝統のルールとして女性の舞手を認めていなかったが、隣町の高鍋神楽に女性の舞手がいたことをきっかけとして、女の子の舞手を認めたことで子供の舞手が増えた。今の課題は、多くの子供が高校生や社会人となり町外、県外に出てしまうため、大人の舞手がいないことである。今後、県内に就職してくれる子や、一旦県外に出ても戻ってきてくれる子が増えるような対策が必要と考えるが、神楽だけの問題ではないので非常に難しい面がある。
- 西米良村については、高齢化による舞手不足が問題となっている。自分が所属する村所神楽は比較的維持できている状況ではあるが、越野尾神楽については、舞手不足により、本来は朝まで夜通し実施する夜神楽を、夜中までの半夜という形でしか実施できない状況となっている。小川神楽については、今は朝まで実施できているが1人の舞手が舞う時間や役割が増え負担が大きくなってしまっている。また、準備等に携わってくれる氏子さんが減っていることも課題である。村所地区では座組と呼ばれる氏子さんのグループが8組あったが、今は2組まで減っている。村所地区の他、4地区で舞うことになっており、コロナ禍以前は毎年3回(3地区)実施していたが、コロナ禍後はできていない地区もあり毎年1~2回の実施となっている。少しずつでもコロナ禍前に戻していきたい。
- 所属している下方神楽は地区も小さく、見に来る方も毎年、同じ高齢の方のみで、宣伝力に欠けると感じている。舞手も高齢化が進んでいるため、若い人の参入が必要と考えるが、若い人からすると神楽はマニアックでインパクトが足りないと感じている。また会場である神社も老朽化が進んでおり、舞手が危険を感じることや、見に来ようとする方が行きづらい要因にも繋がっていると考える。
- 祖父が神楽をしていたが、昨年亡くなってしまい代わりに神楽をしたいという思いで神楽を始めた。学校の同級生は神楽を知らない子ばかりで、若い世代に知られていないことが課題だと感じている。子供の時にダンスを習っていたが、そのクセが抜けずに苦労した。
- NPO法人として地域の活性化や村おこしを行う職員として働いている。村おこしを考えていく中で、地元の人が集落を守るとの意志の根底に銀鏡神社、銀鏡神楽を守り続けるという強固な想いを感じ取り、その想いがあることで集落がまとまり、発展への計画が立てやすかったと感じている。映画『銀鏡SHIROMI』が作られたが、その映画の中で神楽を舞う理由を問われ、「ただ、ありがとうという気持ちを表している」と語られる。また若い舞手の方が「守りたいので自分たちは変わり続けないといけない」ということを話してくれた。この2つは自分にとって、とても納得できる言葉であり、刺激を受けた。この地域に住んではいないが、仕事をする中で助けていただく集落の方々や神社に対して年に1回はありがとうの感謝の気持ちを表すために自分のできることをするという考えで、神楽サポーターとして活動している。神楽サポーターの活動は受付や駐車場整理など直接、神事に関わる部分ではなく、外回りの仕事だと認識している。昔はこのような仕事や食事等の賄いも全て集落で実施していたが、神楽サポーターや食堂等を頼って依頼するなど、変えることができる部分を変えていくことが継承の1つのポイントだと考える。
ユネスコ無形文化遺産登録に向けて、また登録実現後に、どのように神楽の継承に関わっていきたいか
- 世界農業遺産高千穂郷・椎葉山地域では祈りという面で神楽を大切にしている。高千穂では、学校教育の中で神楽の学習を継続している。他の地区では、子供が神楽の存在を知らないという話もあったが、例えば高千穂小学校では運動会では全学年で神楽を舞う。神楽歌の学習会も実施する。高校では神楽保存会を作っているため、毎年、神楽甲子園にも参加している。そのような環境が形成されているため、大学等で県外に出た子供が戻ってきて神楽継承をするという好循環につながっている部分も大きい。女性の舞手については、子供は認められているが、大人については、練習を実施しているグループ等も存在するが、神楽場の中で正式に舞うことは認められていないのが現状である。今後このようなしきたりをどうするのか決めていくことも重要だと考える。
- 行政とのつながりでは、観光協会や教育委員会が村の文化としてアピールしていきたいという面もあるが、多くの観光客が押し寄せても困るという半面もあり、大手を振って来てくださいとの表現ではなく、「宿はないので気をつけてください。」や「焼酎2升又はそれなりの金銭をお持ちください」といった注意点をお知らせする表現をしている。このような現状を今後どうしていくかが課題である。神楽はDNAと考えることが多い。親から子に受け継がれるDNAはどれが欠けても生まれない。神楽については舞はもちろん、御神屋(みこや)等の文化も受け継がれてきた。服装は、明治中期から使用されていたものを現在も使っている。大事な文化は欠かさず継承していくことが重要であるため、その方法を模索していきたい。
- 女性は成人した後、しきたりにより舞手を続けるのが難しいというのが現状である。高鍋神楽については、今年の六社連合大神事において成人女性2人が神楽を奉納した。男女のくくりで判断することは非常にもったいないと感じており、男女ではなく同じ人間ととらえ、継承する人間が増えてくれればよいと考え活動している。成人女性も本人が希望されるのであれば、舞手として奉納いただくことは問題ないと思っている。成人女性が活動されることでその子供や家族が見に来ることにより、多くの人や次の世代にも広げていくことに繋がる。大人が綺麗に勇ましく舞う姿も見せることで初めて子供が感動を覚え、継承に繋がっていく。広報等も必要と考えており、費用を抑えるために独自でホームページを作成している。他の地区では、役場の職員が舞手として活動しているという話もあったが行政との連携も必要と考えているため、今後自分の地区でも取り組んでいかなければならないと感じた。
- 西米良村では、中学校の地域学習として神楽を学んでいる。また西米良村全体の運動会としてメラリンピックをおこなっているが、その中で小学生が神楽体操という神楽からできた体操をおこなっている。別の取組として、今年度から小学生と一般の方を対象とした小川越野神楽教室を開講している。後継者育成、関係人口の増加に繋がると考えている。自分は神楽がかっこいいと思っているからこそ続けているし、小学生の頃から見てきて育ててもらったと感じているので、神楽教室等は重要な取り組みと感じている。また、大阪・関西万博で西米良神楽をVRで体験できるブースの準備を進めており、実際に来ることが難しい方や海外の方にも、神楽の魅力や雰囲気を感じてもらえる機会になると考えている。加えて西米良村では、小川資料館を神楽にまつわる観光や交流の拠点として改修計画を策定したり、海外での神楽公演を検討する活動をおこなっている。このような活動には金銭が必要なため、クラウドファンディングをおこなっている。
- 現在、就職を考える時期となっており、県外就職も視野に入れ考えているところである。働くことを中心に考えると舞手を続けていくことは難しいと感じているが、サポートでは何かできると思っており、今後、自分に何ができるかを考えることが必要と感じている。
- 同じく就職を考えているが、地元での就職を希望しているため、今後も神楽を続けていきたいと思っている。
- 西米良村でもユネスコの無形文化遺産登録について、危惧する意見もある。交通の便が悪いためにがっかりさせ、おもてなしが行き届かないことがあるのではないかの声もある。交通の便を解消するためにNPO法人でバスを運行する実証実験をおこなったが、乗客が見込めず失敗に終わってしまった。そういった地域や民間では難しい部分を行政にサポートしていただきたい。最近は、推しの舞手や推しの神様といった見方をする方々も増えてきている。神楽を舞う姿はかっこいいので、発信していくことが重要と考える。
- 他の地区の話も伺って、学校教育等で取り上げてもらうといった取組は小さな地域の神楽では難しいと痛感したところであるが、SNSでの発信や消防団隊員等の地域の方への新規参入の声かけはおこなっており、今後もこういった活動が重要だと改めて感じた。
ページの先頭へ戻る
- 本日の「知事との本音トーク」における皆様の貴重な御意見と情報共有に心から感謝申し上げる。限られた時間の中で、非常に興味深いお話をきくことができ、とても有意義な時間だった。
- 舞だけではなく、準備や賄いの保存継承を含めて神楽がユネスコ登録され世界の宝となるということを再認識できた。また、ユネスコ登録、国指定されることを危惧する声があることも考えていかなければならない課題である。
- 要所で話にあがった女性の参入、子供の参加を各地域でどのように考えていくのかというところも継承を考えていく上での重要なポイントだと感じた。
- 引き続き、全国の皆様と力を合わせてユネスコ登録を目指していきたいと考えている。しかしながら、登録されれば保存・継承が約束されるものではないので、登録を弾みにしてモチベーションを保ち保存・継承していく方法を、登録への活動と並行して考え実践し続けることが重要だと再確認した。
- 本日は皆様から、様々なヒントをいただいた。これからも率直な声をいただきながら、まずはユネスコ無形文化遺産登録を一つの目標として神楽全体を盛り上げるために対応してまいりたい。
ページの先頭へ戻る