宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
オキザワラの突きん棒漁

魚に似せた「カタ」を泳がせて、手銛で突く。
魚と人が一対一で挑む勇壮な漁。

沖を回遊する大型の魚を、手に持った銛(もり)一本で狙う突きん棒漁は、魚と人が一対一で対峙(たいじ)する、勇壮な漁だ。宮崎県内では主にオキザワラを狙う。和名をカマスサワラというこの魚は、世界中の温帯・熱帯域に分布しているサバ科の魚である。大きいものは、最大2メートルにも達し、トローリングの対象魚として欧米でも知られている。

日本では沖縄から南九州にかけてと、伊豆・小笠原諸島周辺が主な漁場になっていて、黒潮が間近を流れる宮崎県沿岸でも、かつてはなじみ深い魚だった。泳いでいる魚を銛で突くというシンプルな漁であるだけに、むしろ技術的には名人芸の突き技が要求され、現在では延岡、門川、串間一帯の一部で継承されている。

突きん棒漁は二人一組

突きん棒漁は二人一組。一人が竿の先につけたカタを泳がせ、寄ってきた魚を突き手が仕留める。

オキザワラの突きん棒漁に欠かせないのが、「カタ」とか「吹き流し」と呼ばれる魚の張り型だ。竹竿の先に、「カタ」をつけて水中を曳くと、仲間と思ったオキザワラが寄ってくる。そこを銛で突くのだが、漁師たちの手作りである「カタ」は、色の選び方に工夫があるという。それぞれの海域や潮の色によって、魚が寄りやすい色合いがあるそうなのだが、そこが各人の秘伝となっているのだろう。この道36年の経験をもつ、延岡市の児玉憲一郎さん(56)に話をうかがった。

「銛をどこに刺すかが腕の分かれ目。背中や腹に刺すと売りものになりませんし、魚も暴れて傷む。一番いいのは頭を狙うことですが、頭は固いのでこれも難しい。うまい人はエラの横あたりを一撃でしとめます。時々、カジキが獲れるこもありますよ」

オキザワラの漁期は主に秋。淡泊ながら軽い脂ののった白身で、おいしく食べられる魚だ。