宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

シイラ漬け漁

港で、獲れたてのシイラを刺身にしていただいた。新鮮なシイラは身に透明感があり、甘くぷりぷりとしておいしい。

海面の色が変わるほどの群れを
竹や柴を浮かべて寄せる伝統漁

延岡沖13マイル、午前6時。すでに陸地は見えなくなり、海の色が深みを増してきたあたりに、孟宗竹にくくりつけられた白いブイが浮かんでいた。浮遊物につくシイラの特性を利用したシイラ漬け漁のブイだ。

黒潮の温暖な海を回遊するシイラも、ただあてどなく海をさまよっているわけではない。海面を漂う流木や海草などには小魚がつき、それを目当てにシイラもやってくる。シイラ漬け漁は、竹や柴を海面に浮かべておいて、そこへ寄ってきたシイラを巻き網で獲る漁だ。延岡漁協所属「松栄丸」の松下清さん、修さん親子は、夏になるとシイラを追って毎朝沖へ出る。

松下さん親子の「松栄丸」

ここぞというポイントに竹を投入する。松下さん親子の「松栄丸」はシイラ漁専門の船だ。

「魚がいる時は水の色が変わるからわかりますよ。船から見るだけでシイラの色でびっしり敷き詰められたようになります。ただ、いない時にはまったくいない。水温や潮の色などで、ある程度判断できますが、ほんとのところは海へ出てみないとわかりません」(修さん)

海のど真ん中に浮かぶ孟宗竹とブイ

陸地も見えない海のど真ん中に浮かぶ孟宗竹とブイ。シイラはここに集まってくる。

別名をマンビキというように、一匹見えれば万匹いるというくらい大きな群れを作る。あたり一面の海が魚の色に染まるほどの群れは壮観だ。シイラはとてもうまい魚だが、肉質がデリケートなため「刺身のほんとうのうまさは、その日のうちが一番」という。地元では船上の漁師料理として、味噌たたきが伝わっている。

最近は、低カロリー、低脂肪でくせのない味わいが評価されて病院や学校などの給食に使われるようになり、価格も安定してきた。黒潮の申し子といえる夏の魚、シイラの魅力が再評価されている。