滋味あふれる秋の恵み、
季節の喜びをそのままに楽しむ。
いのししの塩焼き

柔らかく、うまみもたっぷり。
山の里の最高のごちそうだ。
猪は鹿とともに11月中旬から始まる狩猟シーズンの主役。狩猟文化の伝統がある宮崎では、なじみ深い山の味覚だ。上方落語「池田の猪買い」には、風邪をひいた主人公が猪を食べると治るといわれて猟師を訪ねるシーンがあるが、昔から猪には体を温める作用があると信じられてきた。寒い冬に味噌仕立ての「ぼたん鍋」などを食べると、たしかにぽかぽかと芯から温まるようだ。
料理では鍋が有名だが、鮮度の高い肉を使った塩焼きが最高という人も多い。肉質は意外なほど柔らかく、噛みしめるほどに深い味わいで、なるほど「滋味」というのはこういうものかと実感する。狩猟シーズンはちょうど神楽の季節にあたるが、椎葉神楽や銀鏡神楽など、番付の中に猪猟を表現した狩猟儀礼が含まれていたり、神前に猪を奉納するところも多い。中でも銀鏡神楽では、すべての番付が終わった後、銀鏡川の川原で猪の肉を供えて獲物の霊に祈る「シシバ祭り」が厳粛に行われている。山の恵みへの感謝と山の神へのおそれを込めた儀式は、食べ物のありがたさを現代に伝えてくれているようだ。
イセエビ

秋の宮崎を代表する海の幸。
ほんのり甘いお造りは絶品。
毎年、9月1日に解禁されるイセエビは、宮崎の秋の味覚を代表する海の幸だ。料理は活きたままのイセエビを使うお造りが絶品。頭や殻はこくの深い味噌汁になる。日南市富土では磯魚とともにイセエビを炊き込みご飯に仕上げる「ずし」が名物料理になっている。
地こんにゃくの刺身

地元どれのこんにゃく芋を原料に、
ひとつひとつ手作り。ゆず味噌の風味もよく合う。
高千穂町や日之影町の周辺は古くからこんにゃく芋の産地。地元どれの芋を使った「地こんにゃく」はずっしりとしまり、風味も豊かだ。ゆず味噌で食べる刺身は、手間ひまかけた本物ならではの味わい。名物の煮しめにも欠かせない素材となっている。
田舎そば

宮崎は焼畑農法の伝統があるそば産地。
そば本来の香りと味わいを楽しみたい。
焼畑によるそば栽培の伝統がある宮崎は、そばと縁が深い。高千穂町には全国でも珍しいそば焼酎があり、椎葉村では「わくどう汁」が名物になっている。宮崎のそばは、麺が黒っぽく太い田舎そばが主流。実を丸ごと粉にするため、そば本来の香りを存分に楽しめる。
メヒカリの唐揚げ

淡白な白身に上品な脂がのった味わい。
漁師が毎日食べても飽きないうまさが評判に。
延岡、北浦沖の深い海で獲れるメヒカリ。もともと漁師料理として親しまれていたが、映画評論家の荻昌弘さんの紹介により「延岡のメヒカリ」として全国に知られるようになった。淡白な白身に上品な脂がのった味わいは、塩焼き、唐揚げ、刺身などでおいしく食べられる。

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