宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
かんしょ栽培

竜口山の麓に広がるかんしょ畑で、妻の純子さんと。このみずみずしい緑の葉の下に、充実したお芋が育つ。

めざすのは質・量ともに「日本一」。
串間のかんしょを超高級ブランドに育てたい。

串間市大束/江藤隆一さん

降りそそぐ太陽の下、台地一面に広がる緑の畑。南国のエネルギーをいっぱいに受けて育つ串間のかんしょは、味わい、出荷量ともに全国指折りのブランドだ。昭和40年代から地区を挙げての産地づくりが進み、市町村別出荷量日本一となった串間市の、中心的産地である大束地区で、栽培に取り組む江藤隆一さん。同志社大学法学部を卒業後、金融関係のプログラム開発の仕事に従事。上司と二人で福岡支社を立ち上げ、多くの部下を抱える順風満帆の中で、一転、帰郷を決意して平成 11年から父溜さんが拓いた畑に立つことに。

「転身の理由をよく聞かれますが、父の跡を継ぐという自然の成り行きでした。それにコンピュータの仕事は何しろしんどいことが多くて(笑)。農業が楽というわけではありませんが、他人に左右されず自分のペースで生きられますし、すべてが自己責任ですから、やりがいがありますね」

宮崎紅

あざやかな紅色とほっくりとした甘さが特徴の宮崎紅。超高級ブランドにも負けない味わいと、安定した供給体制で串間のかんしょは出荷量日本一になった。

もともと養蚕が主力だった大束地区で、青果用かんしょの生産が始まったのは、昭和41年頃。台地で日当りと水はけがよく、鉄分を含む火山灰土が栽培に適していたこと、それに台風に強い特性から、急速に産地づくりが進んだ。品種は、ほっくりとした味わいが特徴の宮崎紅。宮崎県バイオテクノロジー種苗増殖センターで無菌培養されたウイルスフリー苗を使うことで横縞症などの症状がでなくなった。また、収穫後60〜90日、気温13度ほどに保たれた貯蔵庫で寝かせることで、発芽を押さえながら糖度を上げる技術が定着して、「串間のいもはおいしい」と、全国的な評判を呼んでいる。

「収穫のピークは6月から10月。10月頃にとれたかんしょが、貯蔵を経て甘みを増し、ちょうど焼き芋のおいしい季節に市場に出回ります。とれたても、天ぷらにするとさっぱりとして夏向きの味ですね」

そんな串間のかんしょだが、江藤さんによると「まだ価格が安すぎます」とのこと。
「出荷量は日本一になりましたが、徳島産に比べると価格の評価はもう一歩。味そのものは負けていないので、さらなるブランドづくりが課題だと思います。父の世代が作った串間のかんしょの価値を、ぼくらの世代がより高めていきたいですね」

山からひいた清らかな湧き水

山からひいた清らかな湧き水が畑を潤し、串間のかんしょを育てる。この水は、収穫したかんしょの洗浄にも使われている。