宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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宮崎逸品図鑑【旅編】

雄大な太平洋に面した海岸線から、
さまざまな伝承に彩られた山里まで、
宮崎には、日本のふるさとといえる風土があります。
はるかな神話の時代から、
ゆったりとした時間をかけて育まれてきた
おおらかな自然と風景を訪ねて
宮崎の代表的な観光エリアを旅してみましょう。

高千穂 たかちほ

古代からの神話と伝承が美しい自然を彩る町

国見ヶ丘
国見ヶ丘/晩秋から冬にかけて壮大な雲海を見ることができる国見ヶ丘。
阿蘇、祖母山などを見渡せる眺望の地だ。

神話と伝説の町、高千穂町は九州山地のほぼ真ん中に位置する。地図で見ると、奥深い山の里をイメージするのだが、ここは標高300メートルほどの日当たりの良い台地が広がり、水も豊かで、まるで険しい山の中に別天地が開けているようだ。この恵まれた土地には古くから人が住み、田を開き、数多くの神話や伝説が受け継がれてきた。その代表が、天孫降臨神話だ。地上の混乱を鎮めるために天から遣わされた天孫ニニギノミコトは、「筑紫の日向の高千穂のくしふるの峰」に降臨する。ミコトはこの地に設けた高千穂宮に住み、国造りの端緒をひらくことになった。

天安河原
天安河原/岩戸川のほとりにある天安河原は幻想的な雰囲気。
神話時代、この場所で八百万の神々が集ったという。

高千穂神楽
高千穂神楽/高千穂には町内に20以上の神楽が伝わる。
神楽の夜をしのばせる田舎そばやかっぽ焼酎も名物。

また、岩戸川のほとりにある天安河原(あまのやすがわら)は、アマテラスオオミカミが岩戸に隠れて世界が闇に閉ざされた時に、八百万の神々が集まって相談をした場所。この時にアマノウズメノミコトが神がかりとなって踊った舞いが、すべての神楽の原型だといわれている。そして高千穂は、町内に20を越す神楽が800年以上の歴史を刻む神楽の里でもある。歴史と神話、現実と伝承が境目なく入り混じる不思議なまち・高千穂には、古代と現代をつなぐタイムトンネルが、あちこちに扉を開いているようだ。

高千穂峡
高千穂峡/春の新緑、夏は涼を求めてボート遊び、秋は紅葉と、四季を通じて楽しめる。
阿蘇の溶岩流から形成された柱状節理が垂直に切りたつ。

寒い神楽の夜、焼酎とともに
「お煮しめ」

お煮しめは、祝いや祭りなど特別の日だけに供されるハレの日の料理だった。高千穂では、戸を開け放した座敷で寒い冬に舞われる夜神楽に欠かせない料理。大鍋で煮込んだ椎茸やこんにゃく、干したけのこなどを焼酎とともにいただきながら、夜明けを待つ光景は、おそらく何十年、何百年と変わらないのだろう。