宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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延岡 のべおか

城山の鐘がまちに響く川の流れ豊かな水郷都市

城山公園
城山公園/こんもりとした緑に囲まれた延岡城址。写真の石垣は、外敵に攻められた際
ある石を外すとすべて崩壊する「千人殺しの石垣」と伝えられている

延岡市は、市内を流れる五ヶ瀬川、北川、大瀬川の河口がひとつになって海へ注ぐ、水の都だ。その象徴である鮎やなは、延岡の秋の風物詩。産卵のために川を降る鮎を大がかりな竹スノコで獲るやな漁は、三百年の歴史をもち、特に子持ち鮎の甘露煮は延岡を代表する味覚として珍重されている。平成の市町村合併で、美しいリアス式海岸線をもつ漁業のまち・旧北浦町と、鹿川渓谷や五ヶ瀬川の景観が美しい旧北方町、ホタルが舞う清流のまち・旧北川町も加わり、その自然の魅力はいっそう増した。

鹿川渓谷・下阿蘇ビーチ
左)鹿川渓谷/なめらかに磨かれた花崗岩を、滑るように水が流れていく。
右)下阿蘇ビーチ/ビーチの松林にはケビンなどの宿泊施設を備える。
隣接する道の駅・北浦には珍しい塩の資料館も。

砂浜の美しさもよく知られており、日豊海岸国定公園のリアス式海岸に守られるように、下阿蘇、須美江、熊野江、浦城と四つの海水浴場がある。中でも下阿蘇海水浴場は、環境省の「快水浴場百選」のうち、九州で唯一、「特選ビーチ」に選ばれるほど、水質・環境が素晴らしい。市民の憩いの場となっているのが、慶長8年(1603年)に高橋元種が築いた延岡城趾(城山)だ。この山から正午になると鳴り響く、城山の鐘の音色には、城下町延岡の歴史が込められているようだ。

鮎やなと・大崩山
左)鮎やな/竹スノコを組んで川を降る鮎をとらえる、延岡の秋の風物詩。
五ヶ瀬川は30cmを超える巨鮎の川として知られる。
右)大崩山/標高1643m。原生林の中に巨大な花崗岩の岩山がそびえる、ロッククライミングの名所。
祖母傾国定公園にあり、周辺は祝子川渓谷など美しい景観に恵まれている。

淡泊な白身に軽い脂がじわり
「メヒカリの唐揚げ」

水深100m〜300mと深い海に棲むメヒカリ(アオメエソ)。そのおいしさは、あまり知られていなかったが、延岡のメヒカリ料理がマスコミで紹介されたのが全国に知られるきっかけになったといわれる。淡泊な白身で骨が柔らかく、軽快な脂がのった上品な味。唐揚げのほか、一夜干しやフライなどでおいしい。

メヒカリの唐揚げ

五ヶ瀬・椎葉 ごかせ・しいば

4億年前の地層が眠る九州発祥の地

五ヶ瀬ハイランドスキー場
五ヶ瀬ハイランドスキー場/日本最南端の天然スキー場。向坂山からの眺望も素晴らしい。

約4億3000万年前、九州島が初めて海底から姿を現した時に、まっさきに陸地になったのが、五ヶ瀬町周辺だといわれる。標高1307メートルの祇園山には九州最古の地層があり、クサリサンゴなど古代の化石が出土する。周辺が九州発祥の地といわれるゆえんだ。五ヶ瀬町は南国宮崎県にありながら、年間平均気温は東北なみで、冬場の降雪量も多く、向坂山には日本最南端の天然スキー場である五ヶ瀬ハイランドスキー場がある。標高差190メートルという本格的なゲレンデをもち、スキーヤーやスノーボーダーの人気を集めている。


鶴富屋敷/平家の鶴富姫と源氏の那須大八郎の、悲恋の物語の舞台となったといわれる。
山の斜面に立つ椎葉村の家は、土地を有効利用するために部屋が横に並ぶ
独特の形式をもつが、その典型的な建物。国指定重要文化財

ここからの渓流沿いの国道を行き、国見トンネルを抜けると椎葉村だ。この村に伝わる平家落人伝説は、民謡「ひえつき節」に歌われる追討の将、那須大八郎と平家の鶴富姫との悲恋の物語とともに、語り継がれている。また、民俗学者柳田国男が椎葉を訪れて、狩猟の作法などの伝承をまとめた「後狩詞記(のちのかりことばのき)」(明治42年)は、日本民俗学の発祥となった。各集落には数百年の伝統をもつ神楽が伝わるなど、日本の山村文化の原風景を感じられる村だ。

白滝・浄専寺のしだれ桜
左)白滝/五ヶ瀬川源流部にある高さ約60mの白滝。
紅葉の美しさで知られるが、冬季には結氷することもある。
右)浄専寺のしだれ桜/高さ15m、幹周り3m、樹齢250年以上と伝わるしだれ桜。
五ヶ瀬町内には、ほかにも約300本のしだれ桜が植えられている。

香り高く、滋味深いハレの味覚
「田舎そば」

山が深く、平地の少ない山村では、そばは貴重な作物だった。普段は団子汁などにして食べていたが、神楽や祭りなどハレの日にかぎって麺にしたという。田舎そばは、殻ごと粉にひくために黒っぽく、香り高いのが特徴。中でも椎葉村の焼畑で作られるそばは、逸品と評判だ。

田舎そば