宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
かけがえのない風景

水を蓄え、生態系を守る。
注目される棚田の多面的機能。

田は「緑のダム」と呼ばれるように、雨水をためることで地下水の涵養や洪水防止に役立っている。特に中山間地の傾斜地に作られる棚田は、急峻な谷川を雨水が一気に流れ下ることを防ぐ役割をもち、下流域の安全にも寄与している。また、良好に保たれた棚田が、地すべりを防ぐ機能があることも評価されるようになった。もともと、棚田は地すべりのあとに拓かれることが多いのだが、その理由として、地すべりによって土地を開く手間が省けること、水を豊富に含み稲を作るのに好都合だったことなどが挙げられている。

つまり、棚田の多くは地盤の弱いところに作られているのだが、きちんと水路が守られ、手入れをされている間は、棚田が水の出入りを調節して、地すべりが起こりにくくなる。実際に地すべりが起きた時も、棚田で止まり、大規模な崩落が免がれたという例も多い。

田んぼはたらいのようなもの
田んぼは1枚1枚「あぜ」で水を溜めている「たらい」のようなもの。

うまい米を育む豊かな環境

八十八と書くほどたくさんの手間がかかるといわれる米づくり。加えて急峻な地形の棚田では、なおさら手間がかかる上、収量も少ない。そんな棚田だが、澄んだ山水を引いているため、おいしい米が育つ。また、冷たい山水や山の中腹にあるといった厳しい気象条件が、かえって病害虫の発生を抑えるため、使用する農薬も少なくて済む。

こうしたこともあって、食の安全志向が高まる中、棚田の米の中には、標準の二倍近い高値で取引されているものも出てきているという。最近では、さらに付加価値を高めようと、アイガモ農法や減農薬農法、昔ながらの陰干し乾燥など、独自の取り組みも始まっている。絶対量が少なく、なかなか手に入りにくい棚田の米だが、毎日食べる主食だからこそ、時にはこだわってみたい。

棚田の風景 棚田の風景
棚田の風景
棚田の風景

棚田の風景