宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
イノシシ猟

狩り名人は犬作りの名人
いいシシ犬は、野性味があります。

一シーズンに数十頭のイノシシを仕留める猪猟の達人、中武忠征さん。「狩りでもっとも大切なのは犬作り」という中武さんに、その極意をたずねてみた。

「猪猟というと、鉄砲で遠くのシシを狙うように思われるのですが、実際にはシシに組み付いて山刀(やまがたな)で倒すことの方が多いです。犬がシシを追い立てて、すぐそばにいますので、鉄砲で撃つと犬を巻き添えにしてしまうでしょう。シシの匂いを追っていき、発見して、格闘しながら足止めをする。そこまですべて犬の功績なのですな。人間の仕事は、一番最後のところだけですから」

中武さんと山刀

写真左)ボードを使って猟を説明する中武さん。猪猟にはセコ(勢子=追い方)とマブセ(待伏=撃ち方)に分かれてチームで行う方法と、単独で行う一人猟がある。
写真右) 愛用の山刀。実際の猟では、鉄砲よりも使う頻度が高いという。

猪猟に使う猟犬は、シシ犬と呼ばれる。ほとんどが雑種だが、日本犬の系統と洋犬の系統に分かれ、それぞれに性格が違うという。ハウンドやビーグルなどの血が入った洋犬は、シシを追いながらよく鳴くので居場所がわかりやすいが、一般に足が遅い。日本犬は追い鳴きをしないが、俊敏な傾向がある。

「リーダー犬の出来で大体決まりますな。たとえば子犬がじゃれてきた時に吠えるような犬はリーダーにはなれません。理想は、落ち着きがあって、闘争心があり、おそれを知らない犬。ボクシングでいうと、ちょうど亀田選手のような野性味のあるタイプが向いています(笑)」

鹿の皮を使って若犬を訓練

鹿の皮を使って若犬を訓練。逃げる獲物を捕まえた犬を、すかさずほめてやることで、俊敏さを養い、達成感を味わわせる。

猟師はどの尾根で猪が出れば、どの道を通ってどこへ出るか、あらかたの見当はつくという。その確率の高い順に、腕のいい人を配置する。
「猪の道にも国道があれば、県道、村道、私道とあります。そういうことは、たいてい皆の頭に入っています。山はこの何百年変わっていませんから(笑)」