宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

竹細工職人

もっともむずかしいというヒゴ作り。厚さ1ミリを基準に、作品の大小に合わせて微妙に調整する。太い真竹が、その手にかかると生き物のように割かれ、つむがれていく。

竹細工一筋に六十二年、
究極の「かるい」をつむぎだす手技。

日之影町、高千穂町など宮崎県北部の山間部一帯には、独特の運搬具である「かるい」が日常の道具として伝わっている。真竹を均一に削ったヒゴを編んで作るかるいは、丈夫で軽く、収容力も十分で、山菜摘みやきのこ狩り、芋や野菜などの収穫、山仕事の道具入れにと、山の暮らしのあらゆる場面に欠かせない道具として、親しまれてきた山の逸品だ。

竹細工職人・飯干五男さんは19歳でこの仕事に入り、今年で62年。長い伝統をもつかるいに細かな工夫を重ね、現在の形に完成させた名人だ。

「祖父の代から竹細工をやっておりましたので、見よう見まねでだんだんと覚えていきましたな。私は体が弱かったので、座ってできる仕事がよかろうと、自然とこの道に入っておりました」

かるい

かるいは、荒く使っても30年はもつという。シンプルな形に、多くの知恵と技が込められた逸品だ。

飯干さんのかるいは、底から上部に向けて微妙な曲線を描くのが特徴。横から見ると逆三角形のような形をしており、荷物が上にいくほど多く入る。そのため、同じ重さの荷物でも軽く感じられ、体に負担をかけないという。また、底にも工夫があるのか、木や石、地面のちょっとした出っ張りなどがあれば、簡単に立てかけることができる。

飯干さんが完成させた独特の形状は、今では日之影町周辺の定番となっているが、形の美しさが愛されて、花生けや置物として使う人も増えている。
鮮やかな青竹の匂いのする仕事場で、長い時間をかけて練られてきたかるいは、単なる道具を超えた存在感を放っているようだ。