宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
フォト・ファンタジスタ
Photographer Akutagawa Akutagawa
芥川 仁 あくたがわじん
1947年愛媛県生まれ。法政大学第二社会学部卒業。伊豆大島に5年間、水俣市で2年間暮らし、1980年から現在まで宮崎市在住。1992年に写真集「輝く闇」で宮日出版文化賞を受賞。主な著書に「水俣・厳存する風景」「土呂久・小さき天にいだかれた人々」「輝く闇」「銀鏡の宇宙」「春になりては…椎葉物語」などがある。日本写真家ユニオン副理事長。photograph芥川仁事務所代表。


生命の宇宙「青島」

写真・文:芥川 仁

宮崎の観光地を代表する青島は、周囲わずか八百六十メートルの小島である。ずんずんと歩けば十分間ほどで一周できる。この小さな島で、シダ以上の高等植物が二百二十六種、シダ十七種、苔二十五種、地衣類三十二種、菌類八十種、粘菌二十四種が確認されている。

ビロウの花殻についたエナシラッシタケ

夏の闇夜、ビロウの花殻についたエナシラッシタケが、ほのかな青白い光を放つ。

中でも珍しいのは、光るキノコのエナシラッシタケだ。夏の闇夜、じっと目を凝らしてビロウ林の地表を見つめていると、ほんのりと青白い光を見ることができる。
エナシラッシタケは、直径五ミリほどの白色で、枯れたビロウの葉や花枝に着生し、植物繊維を分解して土に戻す役割を果たしている。生態系を維持する一端を担っているのだ。

クロサギとイシカグマ

写真左)クロサギは留鳥として生息し、年間を通じて岩場で餌を探す姿を見ることができる。
写真右)ビロウ林を抜けた日差しにイシカグマ(シダ類)の葉表が輝く。

この他に、青島で確認されている生物は、昆虫が二百九十九種、クモは三十九種、鳥類が十九種などである。樹林の中に佇み、じっと耳を澄ましていると、潮騒に混じって、生命が闘う音が微かに聞こえてくる。足元では、落葉の下で生命が蠢く気配を感じることができる。

人類が足を踏み入れる以前から、青島は、輪廻を支えてきた生命の小さな宇宙であった。だからこそ私たちは、青島に魅せられるのである。
 

ビロウの純林

島の北西部にあるビロウの純林。夕日が林に差し込む時、ビロウ樹が赤く燃える。

クマゼミとヘビヌカホコリ

写真左)昆虫299種の中でも馴染み深いのはクマゼミ。
写真右)ビロウの葉や倒れた樹木を分解するバクテリアを食べて繁殖する変形菌の一種ヘビヌカホコリ。

潮が満ち始めた鬼の洗濯岩

潮が満ち始めた鬼の洗濯岩で、ヤドカリ、エビ、カニ、小魚などが静かに闘いを繰り返していた。

夜明け前の空

夜明け前の空は、いつもドラマチックに幕が開く。

 

データは「青島総合調査報告書」
(一九八四年・宮崎リンネ会発行)による。