掲載開始日:2026年7月23日更新日:2026年7月23日
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豊かな自然に包まれ、日本三大秘境の1つに数えられる椎葉村。この山深い地で、地元の食材を活かしたシャーベット「椎葉物語」が誕生しました。
今回はその考案者である椎葉智代美さんと、ご主人の椎葉勇さんに、開発までの軌跡やそこに込められた想いを伺いました。

椎葉さん夫妻と愛犬のサニー
なんと「椎葉物語」の主な材料は大根・柚子・蜂蜜のわずか3つ!蓋を開けた瞬間に柚子の爽やかな香りが広がります。
口にするとひんやりとしたシャーベットが溶けると同時に、蜂蜜のまろやかな甘みを感じることができます。
そしていちばんの驚きは、このシャーベットの主原料が大根であることです。
大根特有の青臭さは一切無く、口当たりはまるで梨を思わせるような清涼感です。大根が使用されていることを言われなければ、最後まで気付かないほどの不思議な調和に驚きました!
材料はシンプルながらも、椎葉の清らかな自然がそのまま形になったような透き通る美味しさでした。

椎葉物語
20年ほど前、料理コンテストに出品するレシピを考えていたときに大根が家に余っていました。漬物や煮物にしても、どうしても余ってしまって・・・。
“余った大根を何か別の形で活用できないか”と考えたことが、「椎葉物語」誕生のきっかけでした。
大根と同じ秋~冬の時期に旬を迎える柚子。
この2つを使って、お菓子みたいなものができないかと試作を重ねたそうです。
最初は砂糖とか水飴も入れてみたんです。でも、蜂蜜の甘さが一番合うなと思いました。
茹でた大根を崩し、柚子や蜂蜜と合わせて凍らせる。そうして完成したのが、現在のシャーベットでした。
もともとは、家族や椎葉さん夫妻が営む民宿のお客さんに提供していた手作りデザートでした。
お客さんから「これ売ったらいいのに」と声をかけていただくことは多かったのですが、加工場の整備や許可の取得といったハードルが高く、自分で販売するなんて考えたことなかったですね。“おいしいと言ってもらえるだけで十分”と思っていました。
しかし、転機となったのが大学時代の同級生との再会でした。
偶然、SNSで大学の同級生が熊本でアイスクリーム店を営んでいることを知りました。思い切って連絡を取り、「一度これを作ってみてほしい」とレシピを送ってみました。
レシピを送ると、すぐに試作品を作ってくれたといいます。
そうしたら「これいいよ!椎葉の特産品になると思う!」って言ってくれて。
その言葉に背中を押され、本格的な商品化へ向けて動き始めました。
「もう少し果肉を入れたほうがいい」といったアドバイスも受け、見た目にもこだわりながら改良を重ねたそうです。
完成したシャーベットを最初に本格的に販売したのは、2024年に椎葉村で開催された「しいば好き人感謝祭」というイベントでした。地域の料理グループとして参加し、来場者に提供したところ、予想以上の反響があったそうです。
「これどこで売ってるんですか?」「また食べたい!」
と声をかけられることも多く、智代美さん自身も驚いたといいます。
イベントの様子
イベント来場者に提供
そこから、椎葉村で新たなローカルビジネスに挑戦する人を応援する「チャレンジ・応援!椎葉ラボ」に応募。令和7年度に椎葉ラボで採択され、まず最初に乗り出したのは主原料の大根を椎葉村産に切り替えることでした。
「いずれはふるさと納税の返礼品にできたら」と考えていたそうですが、ふるさと納税の返礼品として出品するためには、原料の6割以上を椎葉村産の食材にする必要がありました。そこで、自らが農家であることを活かして、大根の栽培に挑戦したそうです!
そのほかにも地域おこし協力隊や移住者などの若い人たちにも協力してもらいながら、商品のPRやパッケージデザインの作成に取り組みました。
現在は椎葉村内の直売所やオンラインショップで販売を展開しており、最近は大阪にある椎葉村のアンテナショップからも注文が入ったそう!
かつて民宿の食卓で愛されていたデザートは、椎葉の新しい風となりその輪を広げています。

大根の栽培に挑戦

現在のパッケージ
安全で、安心して食べられることだと思います。「椎葉物語」に使用している蜂蜜は、自家採蜜したものですが、椎葉の山々で採れる蜂蜜は、山ごとに樹花の種類が異なると味も香りも全く違います。さらに、湧き水や沢の水はそのまま使えるほど清らかなので、椎葉という環境そのものが土台になっていると思います。
「どんな人に食べてほしいですか?」
そう質問すると、智代美さんは迷わず、
「みんなにですね」と即答!
「素材にこだわっているので、小さいお子さんからお年寄りまで誰もが安心して食べられると思います。さっぱりしてるから、特にこれからの暑い時期にはぴったりですね」と話します。
また現在は、学校給食への導入、村内の飲食店でのデザートメニューとしての展開などを検討しており、新たな夢は広がっています。
最後に、これから地域で挑戦を考えている人へのメッセージを伺いました。
最初は私にも、何か新たなことに挑戦する勇気はありませんでした。でも、思い切って一歩進んでみると、思いがけない出会いや道が開けるものです。私が椎葉の食材を使ってシャーベットを考案したように、どこにいてもその地域にはきっと魅力的な資源があるはずです。ぜひ、その可能性を信じて多くの方に挑戦してみてほしいですね。
大根、柚子、蜂蜜――。
椎葉の自然、人とのつながり、そして“やってみよう”という思いから生まれた「椎葉物語」。そのやさしい甘さには、椎葉の魅力がぎゅっと詰まっていました。
筆者が「椎葉物語」を知ったきっかけは、椎葉の物産館で売り場を見つけたことだったのですが、その日はあいにく売り切れ。一体どんな味がするのだろう、とずっと気になっていました。そして取材当日、「実際に食べてから取材に臨もう!」と意気込んで再び物産館に立ち寄ったのですが・・・なんとその日も売り切れ!!ガランと空いた売り場の冷凍ケースを見て、椎葉物語が多くの人に愛されていることを実感しました。
取材中に印象に残ったのは、ご夫婦が「効率や量ではなく、納得のいくものを届けたい」と思っていらっしゃる丁寧な姿勢です。椎葉の豊かな恵みと丁寧に向き合って作られているからこそ、人の心を惹きつけるのだと感じました。
「椎葉物語」を通して、1人でも多くの方が椎葉の大自然に思いを馳せることを願っています。
宮崎県東臼杵農林振興局
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