6 第 四 系

(1) 四 家 層 (2) 小林火砕流 (3) 通山浜層 (4) 小林流紋岩
(5) 高位段丘堆積物 (6) 末吉層及び都城層 (7) 霧島火山旧期溶岩 (8) 加久藤火砕流
(9) 加久藤層群 (10) 中位段丘堆積物 (11) 阿蘇火砕流 (12) 姶良火砕流
(13) 霧島火山新期溶岩 (14) 低位段丘堆積物 (15) 沖 積 層

加 久 藤 層 群

 加久藤盆地に分布する加久藤層群は、加久藤カルデラが湛水していた当時、この湖に堆積した地層で、厚さは400m以上に達する。本層群の大部分は地表に露出しない。試錐資料(荒牧、1968;露木ほか、1967)によれば、京町付近における本層群の基盤は真幸変朽安山岩類である。盆地を埋めた大部分の堆積物は主として凝灰岩からなり、凝灰質砂層や凝灰質シルト層を挟む。

 本層群のごく上部の地表に露出している部分は、下位から池牟礼層・昌明寺層・溝園層および下浦層に分けられている(伊田、1948;伊田ほか、1951;1956)。池牟礼層は主として軽石質細砂からなり、上部は泥質でしばしば珪藻に富む。昌明寺層は厚い軽石質細砂からなる。溝園層は泥岩および細砂岩の細互層で、一般に層理がよく発達し、Osmanthus ilicifolius, Tsuga sieboldii, Abies firma, Zelkova serrata, Picea polica, Torreya mucifera, Rhododendron quinquefolium, Illicium religiosum, Parabenzoin praecox などの植物化石を多産する(尾上、1971)。下浦層は入戸火砕流の湖中堆積物で、軽石礫および軽石質細砂からなり、よく成層している。

 しかし、荒牧(1968)は地表に露出していない大部分の堆積物を加久藤層群と呼び、これを不整合に覆う地層を下位の池牟礼層と上位の京町層とに区分して伊田の層序を改訂した。それによれば、池牟礼層に含まれる軽石と京町層に含まれる軽石とは組成が全く異なり、前者の火砕流の噴出源は不明であるが、後者の火砕流は入戸火砕流そのものであるという。

 加久藤層群の地質時代について、伊田は鮮新世−更新世とみなしたが、前述のように加久藤カルデラ形成に伴う加久藤火砕流の噴出時期は、古いもので約11万年前とされており、また入戸火砕流の噴出時期は約2.5万年前とされている(福山・荒牧、1973)ことから、加久藤層群の時代を更新世後期とみなすのが妥当であろう。