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発表・調査研究

宮崎県衛生環境研究所年報(2002年)

誌上発表・学会発表

LC/MSによるジギタリス葉中のジギトキシン及びギトキシンの分析

小坂 妙子・小野 英俊・山本 雄三・黒木 泰至

Analysis of Digitoxin and Gitoxin in Digitalis by LC/MS

Taeko KOSAKA,Hidetoshi ONO,Yuzo YAMAMOTO,and Hiroyuki KUROKI

Abstract
The determination of digitoxin and gitoxin in digitalis by LC/MS has been studied. Digitoxin and gitoxin were extracted from digitalis with ethanol/chloroform(2:1) and the extracts were cleaned up on a C18 cartridge. The LC separation was carried out on a ODS-3 column (2.1×150mm) using CH3CN/5mM CH3COONH4 (1:1) as the mobile phase. LC/MS was performed in the selected ion monitoring(SIM) mode using [M-H]- ions at m/z 764 for digitoxin and m/z 780 for gitoxin. The detection limit of both digitoxin and gitoxin was 1μg/g in samples. The contents of digitoxin and gitoxin in the leaves of digitalis were 27-92μg/g and 14-48μg/g, respectively.

Key words : digitoxin, gitoxin,food poisoning,LC/MS

はじめに
植物性自然毒による食中毒は1980年から20年間に全国で1,102件1)であり,その主な原因は有毒植物の誤認摂取によるものである.本県ではツキヨタケ,ニセクロタケ等の毒キノコやチョウセンアサガオ,クワズイモによる誤食事故の報告2〜4)がある.

鑑賞用として宮崎県内の一般家庭でも栽培されているジギタリスは,ヨーロッパ原産のゴマノハグサ科の有毒植物である.ジギタリスは強心薬として日本薬局方に収載されており,その成分はジギトキシンやギトキシン等の強心配糖体であり,心筋の収縮力を増強する作用が極めて強い劇薬5)である.その葉がコンフリーと酷似しているため,誤食による食中毒事故も発生している6)

植物性自然毒中毒は発生件数・患者数は少ないが,発病率や死亡率が高いのが特徴であり,原因物質を短時間に特定することが求められ,簡易かつ迅速な分析法を確立しておくことは重要である.筆者らは毒劇物等化学物質関連の緊急健康被害発生時における農薬・医薬品・植物性自然毒の分析法を報告7)したが,ジギトキシンについてはHPLC/UVによるスクリーニング法であり,食品試料によっては同定が困難であった.それに対してLC/MSは高感度で高選択性的検出が可能であり,Guan F8)らは血液等生体試料中のジギトキシン等の強心配糖体をLC/MS/MSで分析している.そこで今回,ジギタリス葉の主成分であるジギトキシン及びギトキシン(Fig.1)をLC/MSで同定・定量する分析法の検討を行い,更に家庭で栽培されていたジギタリスについて分析したのでその結果を報告する.


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