宮崎県グラフ誌「Jaja」じゃじゃ

 

Jajaバックナンバー

http://www.pref.miyazaki.lg.jp/

宮崎の「米」と「人」で醸す酒。
日本酒「穂倉千徳」

日本酒「穂倉千徳」

「穂倉千徳」と命名された完成品。初回は生酒1000本、純米酒2000本が出荷された

平成25年10月、高原町西麓にある水田で、高原町の農事組合法人「はなどう」が植えた酒米(はながぐら)が初の収穫を迎えた。はなどうは平成20年(2008年)に設立され、組合員は約110人。保有する約15ヘクタールの田畑でヒノヒカリや大豆、麦などを栽培している。平成21年に町内に開いた農産品直売所「杜の穂倉」では組合員の農産物や加工品などが販売され、年間約20万人の利用客が訪れる。その人気を支えるアイテムの一つが、麦や大豆など自家製の農産物を原料にしたオリジナル商品だ。これまでに県内のメーカーと共同で、麦焼酎や地ビールなどを開発、人気を博している。

日本酒づくりは、そうした流れのなかから企画されたもので、宮崎県産業振興機構の紹介を受けて、県内で唯一の清酒専門メーカー・千徳酒造(延岡市)と共同で行うことになった。機構ではアドバイザーとして、東京赤坂の日本料理店「かさね」の柏田幸二郎さんを招聘。柏田さんは日向市出身で「かさね」は国内のミシュランガイドで一つ星となった名店である。柏田さんは、料理人の視点から味やコンセプトづくりのアドバイスをし、商品づくりが進められた。

「香りがよく、すっきり飲みやすい酒を意識しました。(柏田さんからは)都会では今、純米酒が支持されている。当社が作っている純米酒を試飲され、食中酒として最適であり、今までのやり方で進めていけばよいとアドバイスをいただきました」(千徳酒造社長・門田賢士さん)

最適な水分状態を保つため、米は機械ではなく手洗いにこだわった。その味は「きりっとした味わいのなかに、甘みを含んだ、後口のよい酒」(同・門田さん)という。宮崎の「米」と「人」で醸した酒「穂倉千徳」の、これからに注目したい。

農事組合法人「はなどう」の代表理事・黒木親幸さん・千徳酒造の門田賢士さん。左)農事組合法人「はなどう」の代表理事・黒木親幸さん。良い米ができたと喜ぶ
右)千徳酒造の門田賢士さん。今回の酒づくりはこれまで以上に力が入ったという

県産酒米「はなかぐら」が穂をつけた田んぼ県産酒米「はなかぐら」が穂をつけた田んぼ

特別な日に「ちょっと飲もうか」というお酒に

柏田幸二郎さん
柏田幸二郎さん 「赤坂かさね」(東京・赤坂)オーナーシェフ

日本酒は、ここ二十年ほどの間に、また格段においしくなりました。高い技術と情熱をもつ醸造家の手によって、この世界では何度目かの大きな変革が起きていると思います。季節の食材に寄り添うような酒、酒そのものを味わいたいしっかりした個性をもつものなど、全国各地の蔵元から魅力にあふれたお酒が出ています。

その中で、宮崎の酒米「はなかぐら」を使って、素晴らしい日本酒を造ろうというプロジェクトにお声がけいただき、料理人の立場からお手伝いをさせていただきました。

もともと千徳酒造さんの造られるお酒は水準が高く、食中酒としてもよく合う印象がありましたので、少量生産でいっそう丹精されることで、さらに素晴らしいものになると期待しています。

お酒は、土地の人々が味わい、愛しながら育っていくものだと思います。結婚記念日など特別な日に「ちょっと飲もうか」というお酒になってくれればと願っていますし、二年、三年と見守りながら、宮崎の銘酒が育っていくのを楽しみにしていただければと思います。