掲載開始日:2022年2月4日更新日:2024年2月8日

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答申第30号

1.審議会の結論

平成22年8月30日付けの「平成12年9月14日警察庁丙暴暴一発第14号『警察庁暴力団対策部長通知』第3の1(2)イにいう『暴力団員等該当性情報』及び同ウにいう『暴力団員等該当性情報以外の個人情報』のうち、請求者をいつの時点でどの暴力団の、どのような構成員(構成員、準構成員、元構成員の別)として、どのような事実に基づいて把握しているのか、その他請求者に関する一切の情報」(以下「本件情報」という。)に係る開示請求(以下「本件請求」という。)について、平成23年3月24日付けで宮崎県警察本部長(以下「実施機関」という。)が行なった、平成22年9月9日付けで実施機関が行なった存否応答拒否による不開示決定の取消し並びに開示、部分開示及び不開示の決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

2.審査請求の内容

(1)審査請求の趣旨

本件審査請求の趣旨は、宮崎県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、平成22年9月9日付けで実施機関が行なった保有個人情報不開示決定(以下「原決定」という。)を取り消すとの裁決を求めるものである。

(2)審査請求の理由

審査請求人が審査請求書で主張している審査請求の理由は、次のとおりである。

実施機関は、本件情報について、存否を答えること自体が公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることから、宮崎県個人情報保護条例(平成14年宮崎県条例第41号)(以下「条例」という。)第19条に該当するため存否自体が回答できず、仮に存在するとしても、条例第17条第5号(犯罪の予防等に関する情報)に該当するため不開示とすべき情報であるとして全部不開示の決定を行なったが、下記のとおり理由を欠き、違法、不当である。

審査請求人が宮崎地方裁判所に提起している、○○市を被告とした○○○○申請却下処分の取消し等を求める訴訟では、審査請求人が暴力団員であるかどうかが争点となっているところ、○○市は、同市訴訟代理人が行なった弁護士法第23条の2による照会に対する宮崎県警察本部組織犯罪対策課長名の回答書等、3点の資料を証拠として提出している。

これらの資料はいずれも本件情報に該当し、その存否が実施機関によって公にされているため、その存否を答えること自体が公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めることはできない。

また、本件情報の一部が既に公になっている以上、本件情報を開示することによって、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすと実施機関が認めることにつき相当の理由があったとは言えない。

3.審査請求に対する諮問庁の説明要旨

諮問庁が不開示決定理由説明書で説明している本件決定の理由の要旨は、次のとおりである。

(1)対象保有個人情報について

  • ア.部分開示としたもの
    不開示部分は、下記(ア)~(オ)の係長以下の決裁欄の印影、(オ)の「項目4」及び(カ)の内線電話番号である。
    • (ア)平成22年4月13日付け宮崎県弁護士会会長から宮崎北警察署長宛てに発出された弁護士法第23条の2に基づく「回答ご依頼」(平成22年4月12日付け宮照第20号で宮崎県弁護士会所属弁護士から宮崎県弁護士会会長宛てに発出された「照会申出書」を含む。)(以下「文書1」という。)
    • (イ)平成22年5月14日付け宮崎県弁護士会会長から宮崎県警察本部刑事部組織犯罪対策課長宛てに発出された弁護士法第23条の2に基づく「回答ご依頼」(平成22年5月13日付け宮照会第110号で宮崎県弁護士会所属弁護士から宮崎県弁護士会会長宛てに発出された「照会申出書」を含む。)(以下「文書2」という。)
    • (ウ)平成22年5月14日付けで宮崎県弁護士会会長から宮崎北警察署長宛てに発出された弁護士法第23条の2に基づく「回答ご依頼」(平成22年5月13日付け宮照会第109号で宮崎県弁護士会所属弁護士から宮崎県弁護士会会長宛てに発出された「照会申出書」を含む。)(以下「文書3」という。)
    • (エ)平成22年5月17日付け宮北刑二発第43号で宮崎北警察署長から宮崎県弁護士会会長宛てに発出された「照会事項に対する回答について」の決裁伺い(以下「文書4」という。)
    • (オ)平成22年7月12日付けで○○市代理人弁護士から宮崎県警察本部刑事部組織犯罪対策課長宛てに発出された「お願い書」(以下「文書5」という。)
    • (カ)平成22年7月12日付け宮崎地方裁判所への報告書提出に関する決裁伺書(以下「文書6」という。)
  • イ.不開示としたもの
    平成23年3月24日付けで全部開示決定とした情報及び部分開示決定とした上記アのうち開示した部分以外の情報(以下「文書7」という。)である。

(2)本件決定の理由

  • ア.部分開示とした理由
    • (ア)文書1~5の「係長以下の決裁欄の印影」について
      不開示とした警察職員の氏名は、不開示情報として条例第17条第2号(開示請求者以外の個人に関する情報)ウ及び「宮崎県個人情報保護条例第17条第2号ウの知事が別に定める職に関する規則」(平成17年宮崎県規則第30号)(以下「規則」という。)に定める「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる職及びこれに相当する職」に該当する。
    • (イ)文書5の「項目4」について
      暴力団員の認定等に関する情報が記載されるとともに、○○市の代理人である弁護士が立証資料を必要とする理由が記され、当該裁判に対する考え等が示されていることから、条例第17条第5号(犯罪の予防等に関する情報)及び第7号(行政の事務事業に関する情報)キ(当該事務の性質上、開示することにより適正な遂行に支障を及ぼすと認められるもの)に該当する。
    • (ウ)文書6の「内線電話番号」について
      警察内部の連絡事務に関する情報であり、開示することにより事務妨害等を目的とする架電など、事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあり、第17条第7号(行政の事務事業に関する情報)キに該当する。
  • イ.不開示とした理由
    • (ア)条例第17条第2号該当性
      不開示とした対象保有個人情報には、審査請求人以外の個人の住所・氏名のほか、情報の入手時期や場所、内容から特定の者しか知り得ないことから、特定の個人を識別できる情報が含まれている。
    • (イ)条例第17条第5号該当性
      不開示とした対象保有個人情報には、日頃からの情報収集によって把握している暴力団組織等に関する情報が含まれており、これらの情報を開示すると、情報収集対象行為の潜在化や隠蔽、証拠隠滅を図るなど、犯罪の未然防止・捜査が困難になるおそれがある。
    • (ウ)条例第17条第6号該当性
      不開示とした対象保有個人情報には、警察職員による暴力団員及び暴力団組織の認定等に関する審議、検討及び協議に関する情報が含まれており、これらの情報を開示すると、発言した警察職員や暴力団員に係る情報提供者等に危害が及ぶおそれがあることから、率直な意見の交換ができなくなり、適正な意思決定の確保に支障が生じると認められる。
    • (エ)条例第17条第7号該当性
      不開示とした対象保有個人情報には、暴力団員及び暴力団組織等に対する取締りに関する情報や暴力団員の認定における個人に対する評価及び判断に関する情報等が含まれており、条例第17条第7号ア(取締りに係る事務)、同ウ(個人に対する評価又は判断を伴う事務)及び同キ(その他の事務又は事業)に該当すると認められる。

(3)審査請求人による審査請求の理由に対する意見等

審査請求人は、「本件情報の一部が既に公になっている以上、本件情報を開示することによって、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすと実施機関が認めることにつき相当の理由があったとは言えない。」と主張するが、審査請求人に関する裁判等で公になった情報については、原決定を取り消し、平成23年3月24日付けで開示しており、本件決定において不開示とされた情報については、いまだ公になっていないことから、審査請求人の主張には理由がなく、実施機関が行なった処分は妥当であると判断する。

4.審査の経過

当審議会は、本件審査請求について、以下のように審査を行なった。

年月日 審査の経過
平成23年3月25日 諮問を受けた。
平成23年5月2日 諮問庁から本件決定に係る「個人情報不開示決定処分理由説明書」を受け取った。
平成23年7月8日 諮問の審議を行なった。
平成23年8月10日 審議会の指名する委員による調査を行なった。
平成23年8月19日 諮問の審議を行なった。
平成23年10月18日 諮問の審議を行なった。

5.審議会の判断理由

(1)本件対象保有個人情報について

本件審査請求は、原決定を取り消すとの裁決を求めるものであるが、平成23年3月24日付けで本件決定がなされた後も審査請求の取下げがないことから、本件決定において部分開示決定とされた文書1~6のうち不開示部分と不開示決定とされた文書7の情報について開示を求めるものとみなし、本件審査請求に係る対象保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)とする。

(2)審議会における審査方法について

当審議会は、本件を審査するに当たり、本件対象保有個人情報が相当な量となることに加え、特に慎重な取扱いが求められる内容であることから、条例第48条の4の規定に基づき、審議会が指名する委員による閲覧・調査を行なった。

(3)条例の規定について

ア.条例第17条第2号(開示請求者以外の個人に関する情報)

条例第17条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」を不開示情報として規定している。

また、同号ただし書きは、「ア法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」、「イ人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」及び「ウ当該個人が公務員等・・・である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。

ただし、ウのうち、「当該公務員等が知事が別に定める職にある警察職員である場合にあっては、当該警察職員の氏名を除く。」との規定があり、不開示情報とされている。

この「知事が別に定める職」とは、規則で、「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる職及びこれに相当する職」と定められている。

イ.条例第17条第5号(犯罪の予防等に関する情報)

条例第17条第5号は、「開示することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として規定している。

ウ.条例第17条第6号(審議、検討、協議に関する情報)

条例第17条第6号は、「県の機関・・・の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれると認められるもの、不当に県民の間に混乱を生じさせると認められるもの又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすと認められるもの」を不開示情報として規定している。

エ.条例第17条第7号(行政の事務事業に関する情報)

条例第17条第7号本文は、「県の機関・・・が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるものに該当するもの」を不開示情報として規定している。

「次に掲げるもの」とは、「ア・・・検査、取締り・・・に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にし、又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にすると認められるもの」、「ウ指導、選考、診断、相談その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務に関し、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められるもの」及び「キその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすと認められるもの」と規定している。

(4)本件決定の妥当性について

本件対象保有個人情報に係る不開示決定の妥当性について検討する。

ア.文書1~5の「係長以下の決裁欄の印影」の不開示決定妥当性について

「係長以下の決裁欄の印影」は、条例第17条第2号ウ及び規則に定める警部補以下の警察職員の氏名に該当すると認められるため、不開示が妥当である。

イ.文書5の「項目4」の不開示決定妥当性について

この文書は、○○市代理人弁護士が組織犯罪対策課長に対して、暴力団構成員の認定を裏付ける立証資料の証拠化を依頼したものである。

当審議会の指名する委員が見分したところ、暴力団員の認定等に関する情報であるとともに代理人の考えが示されていることから、開示すると、暴力団員等において分析し、組織実態の潜在化又は証拠の隠滅等を図るなど、犯罪の未然防止、捜査、検挙が困難になるとともに、現在係争中の裁判に影響を及ぼすおそれがあると認められる。

したがって、条例第17条第5号及び同条第7号キに該当し、不開示が妥当である。

ウ.文書6の「内線電話番号」の不開示決定妥当性について

当該内線電話番号は、職員個人に割り当てられたものであるが、公表されておらず、公にすれば、事務妨害を目的とする架電がなされるなど、事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

したがって、条例第17条第7号キに該当し、不開示が妥当である。

エ.文書7の情報の不開示決定妥当性について

不開示とされた情報は、本件決定で全部開示された、組織犯罪対策課長から宮崎地方裁判所宛てに提出された2通の報告書の基礎となった各種報告書や資料等である。

当審議会の指名する委員が見分したところ、審査請求人以外の個人に関する情報、暴力団員及び暴力団組織等に関する情報やその認定等に関する審議・検討又は協議に関する情報、暴力団員及び暴力団組織等に対する取締りに関する情報並びに個人に対する評価及び判断に関する情報が含まれており、いずれも開示すると審査請求人以外の個人の権利利益を害し、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、条例第17条第2号、同第5号、同第6号及び同第7号ア、ウ、キに該当し、不開示が妥当である。

以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。

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