掲載開始日:2020年7月13日更新日:2022年7月6日

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答申第40号

1.審議会の結論

成27年5月27日付けの「起案者児童相談所職員○○○○が作成した平成○○年○月○日児童養護施設入所措置承認の申立書に添付した心理判定書○○○○の原因考察において『実母が強い権力を持っており、内夫は実母の言動を全面的に容認している』と記されている。これに断定するに至った調査報告及び証言等の文書」についての開示請求(以下「本件請求」という。)に対して、平成27年6月4日付けで宮崎県知事(以下「実施機関」という。)が行なった保有個人情報不開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

2.異議申立ての内容

  • (1)議申立ての趣旨
    議申立人の異議申立ての趣旨は、本件決定の取消しを求めるというものである。
  • (2)議申立ての理由
    議申立人が、異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての理由は、おおむね次のとおりである。
    • 童養護施設入所措置承認の申立書資料として家庭裁判所に提出されており、開示請求者以外の特定の個人(第三者)に関する相談援助活動の記録、資料、氏名、生年月日の基本的事項のほか健康状態や性質等の心身の状況、家庭、社会生活等の個人情報は公知の事実であり、特定の個人(第三者)の権利利益を害するものではない。
    • 定の個人(第三者)と異議申立人は、この時点で親子関係にあり、氏名、生年月日、性格、家族構成等基本的事項は既知の事実であり、個人情報保護にはあたらないと判断し、不開示とした明確な説明を求める。
    • 該情報を開示することで、児童相談所が行なう指導、援助、調査、診断、評価等の相談援助活動を適正に行なうことに支障を生じるとあるが、当該情報開示請求内容自体は、家庭裁判所提出以前に起案されたものであって、現時点で相談援助活動を行なうことに支障が生ずるとは考えられない。
    • 相談援助活動は、当該児童及びその家庭に対してのみ行われる固有の業務ではなく、当該児童及びその家庭以外の者に対しても反復継続的に展開される業務であり、当該情報を開示することにより同種の事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められる」とあるが、当該開示請求は、平成○○年○月○日以前に児童相談所職員によって起案されたもので、調査、診断、評価を行なう相談援助活動を新たに行なう必要もなく、当該児童及び家庭以外の者に対しての相談援助活動に何ら支障を及ぼすものではなく、児童相談所職員として適正な職務遂行がされていないと判断される。よって、職務を怠ったと判断せざるを得ない。
    • らに当該情報を開示することで、当該児童及びその家庭以外の者に対して行なう相談援助活動に何ら支障をきたすものではなく、どのように支障をきたすのか一切説明もない。これは公務員として説明義務を放棄したと言わざるを得ない。

3.異議申立てに対する実施機関の説明要旨

施機関が保有個人情報不開示決定処分理由説明書で説明している本件決定の理由の要旨は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件決定の理由
    • 開示とした理由
      • (ア)条例第17条第2号該当性について
        1. 開示請求に係る保有個人情報は、開示請求者以外の特定の個人(第三者)に関する相談援助活動の記録、資料等であり、当該情報は第三者の氏名、生年月日等の基本的事項のほか、健康状態や性質、性格等の心身の状況、家庭、社会生活等の個人情報が含まれる。
        2. よって、開示請求に係る保有個人情報は、不開示情報として条例第17条第2号に規定する「開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」に該当し、同号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないと判断し、不開示と決定したものである。
        3. また、開示請求に係る保有個人情報は、第三者の発言記録、検査結果及び心身の状況等に関する情報であって、個人の人格と密接に関係する情報が含まれており、特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除いたとしても、当該情報を開示することにより、第三者の権利利益を害するおそれがあると認められる。
        4. よって、開示請求に係る保有個人情報は、不開示情報として条例第17条第2号に規定する「開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当し、同号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないと判断し、不開示と決定したものである。
      • (イ)条例第17条第7号ウ該当性について
        1. 開示請求に係る保有個人情報は、児童相談所が行なう児童相談援助業務に関する情報であり、児童及びその家庭に対する調査、診断、評価及びそれらの結果に基づく判断に関する情報である。
        2. 相談援助活動は、必要に応じ継続的に調査、診断、評価を繰り返しながら、指導、援助を行なうものであり、当該情報を開示することにより、今後継続して行なう当該児童及びその家庭に対する調査、診断、評価を行なう相談援助活動を適正に行なうことに支障が生ずると認められる。
        3. また、相談援助活動は、当該児童及びその家庭に対してのみに行われる固有の業務ではなく、当該児童及びその家庭以外の者に対しても反復継続的に展開される業務であり、当該情報を開示することにより、同種の事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められる。
        4. 以上により、開示請求に係る保有個人情報は、不開示として条例第17条第7号ウに規定する「指導、選考、診断、相談その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務に関し、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められるもの」に該当すると判断し、不開示と決定したものである。
  • (2)異議申立人による異議申立ての理由に対する意見
    • 議申立人は、「これ(実母が強い権力をもっており、内夫は実母の言動を全面的に容認している)は児童相談所が家庭裁判所に対して提出した申立書に記載されている公知の事実である」ことを理由に、条例第17条第2号に規定する不開示情報には該当しない旨を主張している。
      しかしながら、開示請求のあった保有個人情報は「これに断定するに至った調査報告及び証言等の文書」であり、当該情報の開示の可否は、異議申立人が主張する「これ」が公知の事実であるか否かを考慮して判断するものではなく、条例の規定に基づいて決定するものである。
      よって、開示請求のあった保有個人情報は、前記(1)ア(ア)に記載のとおり、条例第17条第2号に規定する不開示情報に該当すると判断する。
    • 議申立人は、「開示しないことにより申立書記載の内容の信憑性及び児童相談所内事務の遂行に信頼性を全く欠くものとなる」ことを理由に、本件不開示の決定は不適切である旨を主張している。
      かしながら、本件不開示の決定は条例の規定に基づいて適正に処理した結果であり、申立人の主張には理由がない。

4.審議の経過

審議会は、本件異議申立てについて、以下のように審議を行なった。

平成27年9月24日 諮問を受けた。
平成27年10月30日 実施機関から本件決定に係る「理由説明書」を受け取った。
平成27年11月25日 「理由説明書」に対する異議申立人からの「意見書」を受け取った。
平成27年12月10日 諮問の審議を行なった。
平成27年12月21日 審議会の指名する委員による調査を行なった。
平成28年1月25日 諮問の審議を行なった。
平成28年3月23日 諮問の審議を行なった。

5.審議会の判断理由

  • (1)児童相談所業務等について
    • 児童相談所について
      童福祉法(昭和22年法律第164号)第2条において、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と規定されており、県は同法第12条第1項に基づき児童相談所を設置し、同条第2項に規定する児童及びその保護者に対する相談援助活動を実施している。
    • 設入所措置について
      は通告を受けた要保護児童について、里親等への委託又は児童養護施設等への入所措置を採ることとされている(児童福祉法第27条第1項第3号)が、当該措置を行なう場合は、親権を行なう者の同意が必要とされている(同法同条第4項)。
      だし、保護者がその児童を虐待し、著しく監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、親権者の同意を得ることができないときは、家庭裁判所の承認を得て同法第27条第1項第3号の措置を採ることができるとされている(同法第28条第1項)。
      回のケースにおいては、当時の親権者が児童養護施設入所に同意しなかったため、宮崎県中央児童相談所は同法第28条第1項に基づき、宮崎家庭裁判所に対し措置承認申立てを行なったものである。
    • 童養護施設入所措置承認の申立書について
      崎県中央児童相談所が宮崎家庭裁判所に提出した「児童養護施設入所措置承認の申立書(以下「申立書」という。)」には、申立ての趣旨や実情が記載されており、添付書類として児童A及びBの心理判定書や心理面接記録の写し等が提出されている。このうち、本件請求に係る文言は、児童Aの心理判定書に記載されていたものである。
      該申立書等は、児童相談所が実施した児童や保護者、関係機関等との面接及び電話の内容や、児童や家庭に係る評価等が記載された児童相談記録票、心理面接記録、心理判定書、心理判定検査を元に作成されている。
  • (2)本件請求について
    件請求は、県が家庭裁判所に提出した申立書に記載されている異議申立人自身に関する文言を断定するに至った調査報告及び証言等の文書について開示を求めたものである。
    お、開示請求権については、条例第15条(開示請求権)の解釈及び運用基準において、「『自己を本人とする保有個人情報』とは、自分がその情報の本人となっている場合の個人情報をいい、当該個人情報の本人と識別され、又は識別されうるものであれば、自己以外のものの情報の中に含まれるものであっても、開示請求の対象となる」とされているため、「内夫(異議申立人)」の保有個人情報と判断し、開示請求の対象と認めたものである。
    た、本件請求のあった時点で、異議申立人は児童A及びBの親権者ではないため、法定代理人としてではなく本人として請求したものである。
  • (3)本件対象保有個人情報について
    議申立人が開示を求めているのは、申立書記載内容を断定するに至った調査報告及び証言等の文書であることから、本件異議申立てに係る対象保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)は、申立書を作成する元となった児童相談記録票、心理面接記録、心理判定書、心理判定検査となる。
  • (4)審議会における審査方法について
    審議会は、本件を審査するに当たり、本件対象保有個人情報が特に慎重な取扱いが求められる内容であることから、条例第48条の4の規定に基づき、審議会が指名する委員による閲覧・調査を行なった。
  • (5)条例の規定について
    • 例第17条第2号(開示請求者以外の個人に関する情報)
      例第17条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」を不開示情報として規定している。
      た、同号ただし書では、「ア令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当する情報」については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨を規定している。
    • 例第17条第7号ウ(行政の事務事業に関する情報)
      例第17条第7号本文は、「県の機関・・・が行なう事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、次に掲げるものに該当するもの」を不開示情報として規定している。
      「次に掲げるもの」として、「ウ導、選考、診断、相談その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務に関し、当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められるもの」と規定している。
  • (6)本件決定の妥当性について
    件対象保有個人情報に係る不開示決定の妥当性について検討する。
    • 例第17条第2号の妥当性について
      審議会の指名する委員が本件対象保有個人情報を見分したところ、当該情報には児童及び家庭その他関係者と児童相談所との間で行われた面接及び電話の記録等の情報が記録されていることが認められた。これらの情報は、開示請求者以外の個人に関する情報であり、開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報であることから、本号に該当し、また、本号ただし書のいずれにも該当しない。また、誰の、どの記録に記載された内容であるかを示すことにより、発言者が識別され、当該第三者に不利益を及ぼす可能性が否定できないため、部分開示とすることも困難であるといえる。
      た、異議申立人は、家庭裁判所において当該資料の閲覧が認められた公知の事実であると主張しているが、条例に基づく開示の可否は条例に従って判断すべきであって、審判の公正を確保する見地から認められている家事裁判の閲覧制度が、条例に基づく開示とは趣旨が異なる以上、当然開示すべきこととはならない。
      たがって、当該情報は、条例第17条第2号に規定する不開示情報に該当すると認められるので、不開示としたことは妥当である。
    • 例第17条第7号ウの妥当性について
      童相談所が行なう相談援助活動は、その対象となる児童はもとより、その家庭に関する情報が主な内容である。また、児童と保護者との利益が相反する場合が多く、本件も児童相談所によって虐待の認定がなされていることから、その例外とはいえないと考えられる。そのため、本件保有個人情報に記録された内容を開示することは、今後児童相談所が児童や関係者から状況等を聴取しようとした場合に、児童等が安心して相談できなくなることは明らかであり、児童相談所が情報を得ることが困難になるなど、開示することは今後の相談援助活動の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる。
      たがって、当該情報は、条例第17条第7号ウに規定する不開示情報に該当すると認められるので、不開示としたことは妥当である。

以上のことから、「1.審議会の結論」のとおり判断する。

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